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高校野球福島大会(最終日・決勝) 聖光学院、ここぞの爆発力 炎天下の激闘制す

2023.07.26 09:21
2年連続の甲子園出場を決め、チームメートから胴上げされる高中主将
24年ぶりの優勝を逃し、悔し涙を流す学法石川ナイン

 聖光学院が炎天下の4時間近くに及ぶ激闘を制した。学法石川の猛攻に見舞われ、最大4点差を追いかける苦しい試合展開にも、諦めない姿勢を貫き、延長十回タイブレークの末に逆転。大舞台への切符を手にした。昨夏の甲子園で同校初の4強となった先輩の思いを引き継ぎ、届かなかった全国の頂に再び挑む。学法石川は24年ぶりの栄冠は逃したが、強豪をあと一歩の所まで追い詰めた。

■6打点の高中主将「日本一に挑める」

 十回同点1死満塁、6番片山孝選手(3年)の犠飛で2番西本颯汰選手(同)が本塁にかえると、高中一樹主将(同)はベンチから駆け出し、歓喜の叫びを上げた。「日本一に挑める」。チーム最多の6打点で勝利を呼び込んだ立役者は、閉会式後の胴上げで喜びを爆発させた。今大会は打率6割1分5厘と好調だった。プレー中も仲間への声かけを忘れず、チームのよりどころになった。

 2021(令和3)年の秋大会に二塁手でベンチ入りし、昨年の春夏両大会で活躍した。昨年の代替わりと同時に、前主将の赤堀颯(はやと)さんから主将と遊撃のポジションを引き継いだ。100人を超える部員をまとめられるのか―。「自信がなく、キャプテンを辞めようかとまで思った」と振り返る。

 今年2月に転機が訪れた。主力チームの練習を見守っていた赤堀さんは約2週間、苦しむ高中主将に寄り添い声をかけ続けた。「夏に笑うため、心を鬼にしなくちゃいけない」。チームを束ねる心構えについて諭された言葉が心に響き、気持ちが前向きになった。「かけがえのない成長の機会を与えてもらった」と感謝する。

 高中主将がまとめ上げたチームは昨秋から県内公式戦無敗を誇る。今年春の東北大会、日大山形との初戦で延長十回タイブレークからの逆転負けがチームをさらにたくましくした。斎藤智也監督からいざという時に尻込みする精神力の弱さを選手たちは指摘され、勝負強さを手に入れるため、点を追う終盤でランナーをかえす想定の練習を繰り返した。この特訓が学法石川との接戦を乗り越える糧になった。甲子園への道を切り開く逆転劇を見せ、メンバーの成長を証明した。

 決勝で4番を背負った三好元気選手(3年)は、「甲子園でも苦しい試合は必ず訪れる。身に付けた粘り強さを武器に、日本一を目指す」と誓った。


■学法石川、王者と真っ向勝負 延長で力尽きる

 昨秋と今春に連敗した聖光学院を追い込んだ学法石川は、甲子園出場にあと一歩まで迫ったが、その勝利はこぼれ落ちた。駆け付けた約720人の応援団は最後まで声援を送り続けた。敗退が決まるとナインはベンチ前で泣き崩れた。

 本郷翔大主将(3年)は、10安打の王者・聖光学院を上回る13安打を放った打力に触れ「打ち合いは制することができた」と前向きに捉えた。延長十回タイブレークで4点を加え、「あとはアウトを一つ一つ積み重ねるだけ」と守備に回ったが、死球や単打で点差を詰められ、「執念を感じた」と悔やんだ。

 2015(平成27)年に仙台育英を甲子園準優勝に導いた経験がある、佐々木順一朗監督は「こんなに悔しい敗北は経験したことがない」と声を落とした。接戦をものにした聖光学院に対し「勝つ覚悟がまだ足りないのかもしれない」と課題を語った。


■県民に感動 知事

 聖光学院の優勝を受け、内堀雅雄知事は「仲間とともに挑戦を続け、夢を実現させた姿は復興に向けて歩む県民に感動と勇気、希望を届けてくれた。憧れの甲子園では、県代表の誇りと、支えてくれた方々への感謝を胸に、これまでの練習の成果を存分に発揮してほしい」とコメントを出した。