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学法石川追い詰めた 夏の高校野球福島大会 決勝

2023.07.26 10:40
【学法石川-聖光学院】8回表、学法石川無死、内田が左翼線ポール際に本塁打を放つ。捕手杉山
【学法石川-聖光学院】タイブレークの延長10回裏から登板した学法石川の5番手根本
内田の同点本塁打に沸く学法石川の生徒ら
準優勝盾を受ける学法石川の本郷主将

▽決勝 聖光学院11-10学法石川(延長10回タイブレーク)


■内田同点弾 流れ引き戻す一撃 聖地への夢、次の世代に

 1点を追う八回、学法石川の3番内田光亮が内角高めの直球を捉えた。快音を響かせた打球はぐんぐん伸び、左翼スタンドに飛び込んだ。聖光学院に傾きかけた流れを引き戻す同点本塁打に、球場は一瞬の静寂の後、割れんばかりの歓声に包まれた。

 大会序盤は打撃の調子が上がらなかった。打開策を探る中、準々決勝の光南戦以降はバントの構えから強振する「バスター打法」を取り入れた。体の軸がぶれずにボールがよく見えるようになった。鋭いスイングを取り戻した結果、貴重な同点弾に結び付いた。

 伝統の打ち勝つ野球で王者聖光を倒せる―。夢に見た甲子園まであと一歩。ただ、その重圧が十回の守備に就いた学石ナインを襲った。捕手は野手全員を見渡せる。仲間たちの表情が硬くなっていくのを感じた。「とにかく楽しもう」と声を張り上げたが、失策や死球で失った流れを取り戻せなかった。

 「聖光の方が勝利への執念が上だった」と絞り出した。反省点が多過ぎて涙は出なかった。「後輩には気持ちの強いチームを目指してほしい」。スカイブルーのユニホームが聖地で躍動する夢を次の世代に託した。


■延長10回、猛攻に屈す 中堅手で先発、5番手投手の根本 「全力出せた人生最高のゲーム」

 中堅手で先発した学法石川の根本剛希は、2点差に迫られた延長十回途中から5番手投手としてマウンドに立った。直球を主体に粘り強く投げたが、相手打線の猛攻を止められなかった。

 直前の攻撃では2死満塁の好機に内角高めの直球を逃さず、中前に2点適時打を放っていた。守備に移り、追い上げに遭う間にベンチから佐々木順一朗監督と視線が合った。「行けますよ」。帽子のツバをつかみながら目で応え、最後の抑えを引き受けた。

 六回無死満塁の窮地では守備で体を張った。聖光学院の高中一樹が放った頭上を越える打球を懸命に追った。無我夢中でフェンスに激突し、顔を打ち付けた。たんかで運ばれ、心が折れかける中で三塁側スタンドから声援が聞こえた。「まだ応援してくれている」。心に再び火がともった。ベンチで健康状態を確認してもらうと、すぐにグラウンドに戻った。

 3年間の努力の末、たどり着いた決勝。目前だった甲子園の夢はかなわなかった。悔しさをにじませながらも、「全力を出せた人生最高のゲームだった」とすがすがしい表情を見せた。


■勝利信じエール 学法石川スタンド

 学法石川の三塁側応援スタンドには在校生や職員、保護者ら総勢約720人の応援団の他、卒業生も大勢駆け付けた。

 野球部やチアリーディング部の部員のかけ声に合わせ、24年ぶりの甲子園を目指すナインに熱いエールを送った。打撃戦の様相を呈する中、得点のたびにメガホンをたたいて選手を後押しした。

 石川義塾中野球部の小宅海叶さん(3年)は強打で王者聖光学院と渡り合う姿に目を輝かせた。「投手の層も厚い。攻撃は爆発力がある」と息をのんだ。自分も1番打者として攻撃をけん引。24日の県中体を制して東北大会切符を手に入れた。

 来春は学法石川高入学を希望している。「いつかは自分もあの場所でプレーしたい。夢の甲子園を目指す」と言葉に力を込めた。