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将棋好き=数学得意!? 福島県ジュニア五輪上位16人中7人熱中 専門家「論理的思考磨く」

2023.12.25 09:53
盤面に集中して将棋を指す斎藤さん(右)

 「福島県算数・数学ジュニアオリンピックの点数上位者は、将棋をしている子が多いのでは」―。福島民報社「あなたとともに 福島特命取材班」に投稿が寄せられた。取材を進めると、今年のジュニアオリンピックで銀メダル以上だった児童・生徒16人のうち7人が将棋大会に出たり、趣味で楽しんだりしていることが分かった。将棋は算数・数学の学力を伸ばすのか。相関関係を専門家に取材した。


 将棋を取り入れた数学の授業を実施している阪南大(大阪府)の浜道生教授(66)は、算数・数学が公式を基に問題を解き、将棋が定石や過去に指された手筋を参考に一手を選ぶ点で思考方法が似ていると指摘する。「正解や最善の一手を導き出そうとするプロセスで、論理的な考え方が磨かれるのではないか」と語る。

 約20年前からプロ棋士を大学に招き、数学力と将棋の実力が比例するかをテーマに研究している。長年の経験から、子どもが将棋を指すことで(1)記憶力(2)何手も先を読む想像力(3)筋道を立てて考える力―が高まるとしている。さらに算数・数学が得意な子どもが将棋を始めた場合、早期に上達する傾向があるという。

 浜教授は「将棋をやるほど学力が向上すると断言はできない。しかし子どもの習い事として将棋を薦めたい」と話している。

    ◇   ◇ 

 県教委は小学5年生から中学生までを対象に毎年10月、県算数・数学ジュニアオリンピックを開催している。(1)規則性を見いだして問題を解決する力(2)論理的思考力(3)発想力・直感力(4)問題を簡潔かつ能率的に処理する力―の四つを基本方針とした難問を出題。点数上位者を金、銀、銅メダリストとしてたたえている。

 今年度のジュニアオリンピックで銀メダル以上を獲得した小学生9人のうち4人、中学生7人のうち3人が将棋に取り組んでいた。将棋のアマチュア大会で上位の成績を残している児童・生徒もいた。


■「将来はプロ棋士に」 金メダルに輝いた斎藤さん(中村一小)

 2023(令和5)年度の県算数・数学ジュニアオリンピックの小学生の部で金メダルに輝いた相馬市の斎藤玲さん(12)=中村一小6年=は県内のアマチュア将棋大会の小中学生の部で優勝した経験がある。

 小学1年生で盤上の戦いに夢中になった。思考を巡らせた末に勝つのが何よりもうれしいという。現在は市内の将棋教室に週1回通い、インターネット上での対局や詰め将棋で腕を磨いている。

 母親によると、3歳の頃から数字に興味を持っていたという。車のナンバーの数字を瞬時に足して答え、4歳からかけ算の勉強を始めた。元々算数は得意だったが将棋を指している成果か、授業や自宅での勉強に集中できるようになった。将棋の対局後の感想戦では、大人を相手にしてもしっかりと意見を伝え、礼儀作法やコミュニケーション能力も高まったという。

 斎藤さんは「将棋も算数も両方好き。将来はプロ棋士になりたい」と目を輝かせた。


■県内の入門教室体験希望者増加 藤井八冠の影響など

 実際に盤を挟んで対局する将棋愛好家が減少傾向の中、藤井聡太八冠の活躍などの影響で「観る将」と呼ばれる将棋の観戦を楽しむ新たなファン層が増加し、インターネット将棋の利用者も増えている。

 県内の将棋入門教室にも小学生を中心に体験希望者の問い合わせが増えているという。いわき市の教室で将棋を指導する日本将棋連盟公認指導員の松井隆生さん(35)は「毎回、10人程度だった生徒が今年に入って20人ぐらいになった。将棋は長く楽しめる趣味なので多くの子どもに覚えてもらいたい」と話している。