甲子園から遠ざかっていた学法石川は復活に向け、試行錯誤を重ねてきた。最初の一手は、併設する石川義塾中との中高一貫制を生かした育成システムの構築だった。
石川義塾中の軟式野球部は2017(平成29)年に愛好会から部に昇格。県大会を制し2021(令和3)年の全日本少年春季大会で8強に進んだ。学法石川の現主将小宅善叶(2年)ら主力選手が当時の義塾中メンバーだった。昨年の秋季東北大会で活躍した左腕佐藤翼(1年)と捕手大栄利哉(同)も義塾中でバッテリーを組んだ。義塾中出身者は東北大会の登録20人のうち、7人に上る。
義塾中の指導の根幹は「育成」だ。野球漬けではなく、ボールを使った鬼ごっこやサッカー、ソフトテニスを練習に取り入れ、運動神経や幅広い身体動作、判断力を磨く。
個人指導でも個性や長所を伸ばす視点を重視する。設立から携わる国分大地監督(35)は「野球を好きになってもらうのが一番。学石に限らず進学先で活躍できる選手を育てたい」と話す。中学時代からプレーに力強さがあった大栄にはスケールの大きさを見込み、凡退や失策を責めずに思い切りの良さを求めた。
義塾中から学石に進む3年生は夏の主な大会が終わった段階で硬式球を使い始める。高校野球を意識した対応だ。国分監督は「伸び盛りの時期に野球に専念できるのは大きい」と意義を語る。
現在は部員30人が在籍し週5日、校庭や室内練習場、町内のグラウンドで白球を追う。3月には静岡県での全国大会に、学石と同じスカイブルーのユニホームで臨む。向上心あふれる中学生にとって、センバツ出場を決めた学石は憧れの存在だ。高校の練習を見れば県内屈指の攻守のレベルを肌で感じられる。
義塾中3年で、学石主将の小宅の弟、海叶は昨夏の福島大会決勝を球場で応援した。聖光学院と渡り合う「先輩」の姿に感動したという。「学石に行き、打撃力を伸ばしたい。注目される選手になる」と意気込む。
中学で基礎を固めた選手を高校で一層飛躍させるためには何が必要か。次の一手は優れた指導者の獲得だった。