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【いわき市長選】希望ある航路示して(9月2日)

2025.09.02 09:56

 いわき市長選は投開票日の7日に向け、3候補による選挙戦が熱を帯びる。市制施行60周年の節目を来年に控え、次代の中核市の航路を見定める大切な選挙となる。さまざまな課題に挑む具体策はもとより、将来への希望が実感できるような論戦に期待する。

 市長選には再選を目指す現職内田広之氏(53)、元衆院議員の新人宇佐美登氏(58)、市長を2期務めた元職清水敏男氏(62)がいずれも無所属で立候補した。3人は新型コロナウイルス禍だった前回の市長選でも争ったが、政党などの支持動向は様変わりしている。全員が交流サイト(SNS)での発信に力を入れ、告示前から政策アピールを続けてきた。

 いわき市は1966(昭和41)年に14市町村が合併して誕生し、来年10月に「還暦」を迎える。県内で2番目に多い約31万4千人の人口を抱えるが、市は2060年に17万人台まで激減すると推計している。若者の流出を防ぐとともに、子どもを産み育てやすい地域づくりに向け、各候補とも産業、教育、医療など多分野の政策を訴える。現下の難題に対応する視点と併せ、大局観と遠望力をもって将来像を示してほしい。

 温暖で海、山、川を有し、年間1兆円以上の製造品出荷額を誇る港湾工業都市でもある特性は、他地域と比べ恵まれている面が多い。こうした強みを生かす実行力をリーダーには求めたい。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を経て、近年は2度の豪雨災害で深手を負った。7月には、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする地震の影響で津波が市沿岸に到達した。安心して暮らせる環境づくりも、有権者の判断材料になる。危機の経験から積み上げてきた防災の知見は極めて有効で、来年度にも創設される防災庁をはじめ国際的にも生かされる方策を考える必要がある。

 今回の3人を含む4人が争った前回市長選の投票率は47・68%で、過去2番目に低かった。半数以上が権利を行使せず、特に10代と20代の平均は29・48%と深刻だった。市選管委はSNSを使った学生向けの情報発信を強化している。いわきの未来は自分たちがつくるとの意識で候補者の訴えを吟味し、貴重な一票を投じよう。(渡部育夫)