スポットライトが当たっている。そんな華やかさがある。最近の書店のスポーツ誌コーナーだ。新聞、雑誌社が発行した長嶋茂雄さんの永久保存特集が並ぶ▼思い出を抱き締めたいと、買い求めるファンが絶えないのだろう。球場で観戦しているかのような臨場感に満ちる。走った、捕った、打った。怒った、小躍りした、悲しんだ。ページを飾るスナップから、一人の人間の息遣いが痛いほど伝わってくる。天に召され、きょう３日で３カ月。代名詞「３」が並ぶ特別な日を迎え、追悼の思いが改めて湧き起こる▼共同通信のある記者には、忘れ得ぬ一日がある。２３年前、長嶋さんが故郷・千葉県佐倉市の名誉市民となり、顕彰式を取材した。記者会見で報道陣への気配りを感じた。方向を変えて、身ぶり手ぶりで話す。カメラを向けるたびに、腕を振り、笑顔を浮かべる。間が空くと、口だけ動かして問いかけてきた。「撮れた？」▼目の前の相手を敬う―。それは、スーパースターたる条件の一つなのだろう。わが「ふくしま」の名優西田敏行さんも、古里から訪れるマスコミ陣を実に丁寧にもてなしていた。誰もが見習わなければ。いわゆる、ひとつの真心。＜２０２５・９・３＞