右側の一部が欠けたリンゴが街にあふれる。携帯電話、パソコン、腕時計…。言わずと知れたアップル社のロゴマークだ。企業を象徴するデザインは、時に社名を超えて巷[ちまた]に浸透している▼「ロゴ」の由来は、ギリシャ語で言葉を意味する「ロゴス」や「ロゴテュポス」とか。一目見ただけで、文字のごとく意味が伝わる。そんな驚きが込められているのかも。無数の情報が飛び交う現代では、胸を打つメッセージを放つのは容易でない。親しみや信頼を得られれば、企業価値はぐんと上向く▼自治体にとっても自らをアピールする有力な術[すべ]となる。いわき市は、来年の市制施行60周年を記念したロゴを発表した。市内で発掘されたフタバスズキリュウや、シンボルでもある太陽を描いた。折しも、市長選のさなか。投開票は7日に迫る。かじ取り役によって、その色合いは鮮やかにも、くすんでも見える▼アップルの創業者スティーブ・ジョブズは語った。「先人たちが残してくれたあらゆるものに感謝し、その流れに何かを加えようとしてきた」。古里の歴史を刻んだ先達に恥じぬ未来を選ぶ時。さあ、一票を投じよう。記念のロゴがより輝くために。<2025・9・4>