東日本大震災アーカイブ

東電社員らの家族「申し訳ない」 危険な作業、安全願う

 予断を許さない状況の福島第一原発。事態を収束させようと、現場の高濃度の放射線の中で必死に作業に当たるのは東電や関連会社、応援企業の社員らだ。社員の家族も「こんなことになって申し訳ない」と、まるで自分に責任があるかのように片身を狭くする。わずかでも好転することを願い続けている。
 いわき市南部の避難所。東電社員の長男(38)が震災以来、福島第一原発に詰めているという母(61)は「東電の社員として何とか頑張ってほしい」と祈る。「皆さんには本当に申し訳なく思っています」と、罪の意識にもさいなまれている。
 3月11日朝、長男はいつも通り、いわき市北部の自宅から福島第一原発に出勤した。無事が確認できたのは2日後。携帯電話に「俺は大丈夫だ。家族は?」。「こっちはみんな大丈夫よ。そっちはどうなの?」。何かを言ったようだが電話はすぐに切れた。3日の電話では、「大丈夫だよ」と張りのある声だったという。
 どこでどういう仕事をしているのか。あえて元気に振る舞っているのでは。危険な場所にいる息子への心配は尽きない。
 25年前、長男は中学生の授業参観で「将来の夢」を発表した。「これから電気がますます必要な時代になる。電気をいっぱいつくって世の中に役立つ仕事をしたい」。言葉通り福島第二原発に勤務した。
 連日報道される原発の状況に心を痛めながら、「もうすぐ息子の誕生日。今は戻れるなんて全く考えられない。でも、ほんの少しでいい。息子の元気な姿を見たい」。込み上げてくるものを必死にこらえた。

カテゴリー:福島第一原発事故