東日本大震災アーカイブ

全89校・園で表土除去 二本松、本宮、大玉の3市村

 文部科学省が示した学校の屋外活動の放射線量基準値では子どもへのリスクが大きいとして、福島県安達地方市町村会の二本松、本宮、大玉3市村は9日、それぞれ全ての小中学校、幼稚園・保育所の校庭・園庭の表土を除去することを決めた。準備が整い次第開始し、月内の完了を目指す。国の安全基準に疑問を呈し、国の基準値の半分に当たる独自の基準を設定、私立幼稚園・保育所を含む全ての校庭・園庭で実施する。

 実施箇所は二本松市が小・中学校23校、幼稚園・保育所35施設、本宮市は小・中学校10校、幼稚園・保育所15施設、大玉村は小中学校3校、幼稚園・保育所3施設の全89カ所。

 文科省は、学校の屋外活動の基準値を毎時3.8マイクロシーベルトとしている。この数値をめぐって見直しを求める意見も出ている中、市町村会は放射線防護学の野口邦和博士(日大歯学部専任講師)の助言を受け、独自に半分の毎時1.9マイクロシーベルトの基準値を設定した。

 3市村内の小中学校は、4月上旬の文科省の調査で国の基準値を超えた所はないが、市町村会の独自の基準を当てはめると、二本松市の安達太良小を除き、いずれも毎時1.9マイクロシーベルト以上となる。子どもの安全に万全を期す観点から今回、独自の基準値を下回った安達太良小も含めた。

 土壌の表面3~5センチを取り除き、校庭や園庭の一角に掘った穴に埋めた後、汚染されていない土を1メートルの厚さでかぶせて仮置きする。穴には遮蔽(しゃへい)シートを敷き、地中への放射性物質の浸透、拡散を防ぐ。国が処分方法を決めた段階で掘り起こし、適切に処理するとしている。

 野口氏によると、1メートルの土で覆えば線量は100分の1に低減されるという。

 9日、二本松市内で記者会見した二本松市の三保恵一市長は「国が示した基準は大人と同レベルで、子どもの健康へのリスク、影響が大きいと考え、大人の半分の毎時1.9マイクロシーベルトを除去の判断基準とした」と説明した。

 大玉村の浅和定次村長は、文科省が検証を始めた表層と下層の土の入れ替え方式に触れ、「放射線量の高い土が(地中の)広い範囲に残ることになる」との理由から、この手法を選択しなかったとした。

 除去費用は最終的に国と東京電力に請求する考えで、本宮市の高松義行市長は「明確な処分方法を早期に決めるよう他の自治体と協力して要請する」と語った。

 3市村の学校、幼稚園の関係者や保護者らは表土除去の実施を歓迎している。

 二本松市・二本松一中の安部光夫校長(59)は「屋外での部活動も日時を決め体育館で行っていた。早く思いっ切り練習できるようにしてあげたい」と話す。3歳から8歳まで3人の子どもを持つ本宮市の建築業菅野健治さん(39)は「運動会が中止になり気の毒だった。子どもは外で遊ぶのが一番」と期待を寄せた。

 除去の方法について大玉村・大山小の安斎宏之校長(49)は「表土の入れ替えは不安があったので、穴を掘る方式は賛成」と評価する。安達太良小に6年と2年の子どもが通う三浦多恵子さん(36)は「数値が低くても心配だった。埋めた土の管理は、しっかりとお願いしたい」と注文した。

カテゴリー:福島第一原発事故