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フクシマからの報告2(3)届かぬ政府の支援 住民、自治体あす見えず

フラガールに拍手を送る双葉町民。県外での長い避難生活の苦しさが癒やされるひとときとなった=12日、埼玉県加須市

 埼玉県加須市にある旧騎西高の避難所に12日、いわき市のスパリゾートハワイアンズのフラガールが訪れた。ここで暮らす双葉町民は、およそ1200人。東京電力福島第一原発事故から2カ月が経過した。原発の収束は6カ月~9カ月後とされている。華やかな踊りに一時のやすらぎを得た町民だが、長期の避難生活に疲れ果て、途方に暮れ、望郷の念を強くしている。
 「福島県で生活したい。でも放射線や生活を考えると今は帰れない」。石材店を営んでいた宗像邦浩(35)は家族5人で避難した。同郷の人との共同生活は心強くはあるが、見知らぬ土地で生きていくことへの不安もある。「今の段階で埼玉まで来たのは正解とは言い切れない」
 「町民の命と生活を守るのは私の務め」。事故から6日後の3月18日、集団避難を決めた町長の井戸川克隆は東電が示した事故収束見通しをにらみ、戻るべきかどうか悩んでいる。
 だが、さまざまな課題が浮かび上がる。住民の雇用、仮設住宅、放射線の影響...。福島に戻るには自立した生活ができる環境が求められる。その見通しを示すよう政府には再三、支援を要望してきたが、まだ整ったとは受け止めていない。「原発の収束や町民の安定した生活が見通せない以上、今はまだ帰る時ではない」
 福島市の県自治会館に設けられた県災害対策本部に4月23日、財務相の野田佳彦が訪れた。知事の佐藤雄平と会談後、「仮設住宅を早急に建設してほしいと要望があった。県の期待に可能な限り沿うよう、国有地の提供を検討する」と明かした。政府は福島、会津若松、郡山など8市町村の36カ所、6万2000平方メートルの提供を県に伝えた。
 県の担当者は土地の一覧を見て、深いため息をついた。市街地の土地はどれも狭く、まとまった土地は病院や商業施設から遠く離れていた。着の身着のままで避難した人のための仮設住宅として到底、適地とは言えなかった。「1日でも早く、ゆっくり休むことができる仮設住宅を提供したいのだが...」。現在、建設を予定している1万4000戸のうち、完成したのは12日現在、わずか1531戸にとどまっている。
 「仮設住宅の条件に合うような土地は少ないんです」。財務省福島財務事務所の職員の1人は事業仕分けによって国有財産の処分が進んだことを理由に挙げ、「いまさら、まとまった土地と言われても」と漏らした。
 県は全国からの応援職員を含めた50人態勢で連日、仮設住宅の建設地探しや完成した住宅の確認に追われている。
 広野町では福島第二原発から10キロ圏内の町北部に一時、避難指示が出た。原発事故と、飲料水や電気などライフラインの寸断、相次ぐ余震で、町民の多くが古里を離れた。役場機能もいわき市に移った。
 町全域が自由に立ち入ることができる緊急時避難準備区域となった4月22日、町総務課長の黒田耕喜は複雑な表情を浮かべた。町内の積算放射線量予測は年間10ミリシーベルト程度だが、ライフラインの復旧作業はいまだ手つかずだ。「戻れたとしても、生活する基盤がない」
 町長の山田基星は「町を挙げて戻るのは第一原発事故の収束が見えてから」としている。ただ、収束後に復旧作業を始めては避難生活が長期化する恐れもある。町は上下水道の損壊場所の調査などを進めているが、黒田は「復旧から取り残された自治体には政府の手厚い支援が必要だ」と訴える。(文中敬称略)

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