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フクシマからの報告2(5)後手後手線量対策 独自に動きだす市町村

校庭の表土を削り取る重機。作業員は取り残しがないよう念入りに作業していた=14日、二本松市

 二本松市の塩沢小に14日、重機が入り、校庭表面の土を削り始めた。作業を見守った市教委の担当者はほっとした表情を見せた。「これで少しは安心してもらえるだろう」
 二本松、本宮、大玉の3市村が表土の除去を決めたのは9日。国は屋外活動制限の基準を毎時3.8マイクロシーベルトとしたが、3市村は独自に毎時1.9マイクロシーベルトに基準を設定、小・中学校、幼稚園・保育所全てを表土除去の対象にした。「国の基準に不安を抱く住民が少なくない。だったら地元でやるしかない」。二本松市長の三保恵一は記者会見で理由を説明した。
 県内では独自に放射線対策を講じる市町村が増えている。小・中学校や保育所を数多く抱え、首長や職員は放射線の影響に脅える住民の姿を目の当たりにしている。国の「安全基準」が揺らぎ、対応が後手後手に回る中、自ら対策に乗り出さざるを得ないのが現状だ。
 県内で最初に校庭や園庭の表土除去を決めた郡山市。4月19日に国が「安全基準」を公表した際、それを上回ったのは小学校1校だけだった。しかし、市民からは「他の学校は大丈夫なのか」という声が出ていた。
 表土除去の実証実験で線量が激減した結果や「時間をおけば、それだけ土壌に放射性物質が染み込む。表土除去は早いほど効果が大きい」という専門家の助言を踏まえ、市長の原正夫は即決した。「国の対応をいつまでも待ってはいられない」
 当時、国から校庭の放射線量を下げるための具体策や除去した表土処理方法は明示されていなかった。市は除去した土を市内の一般廃棄物処分場に運ぶ考えだったが、周辺住民の反発を受け、校庭の片隅に仮置きすることになった。市の幹部は「見切り発車」を認めた上で「保護者や学校から強い要望があった」と釈明した。
 福島市長の瀬戸孝則は国が指針を出すのを待っていた。当初、市内で基準を超えたのは小・中学校7校と幼稚園・保育園3カ所。郡山市が表土除去を始めた直後から対策を求める保護者の声が徐々に大きくなるのを感じていた。「子どもを外で遊ばせられない」「なぜ、福島市は表土を取り除かないのか」。国から除去した表土の処理基準は示されていない。表土を集めると放射線量が上がるとの指摘もあった。「土の処分方法が分からない以上、対応は難しい」。国や県に表土の処理の基準と方法を早急に提示するよう求め続けるしかなかった。
 表土除去の必要性を認めない国は11日になってようやく、線量を下げる効果がある2種類の対策を提示した。瀬戸はすぐに国の「安全基準」より厳しい毎時3.7マイクロシーベルト以上だった渡利中など小・中学校、幼稚園など26カ所の表土を削るよう指示した。
 渡利中は東日本大震災以降、校庭での活動を控えてきた。「子どもに影響を及ぼす可能性があるなら、活動を制限するのは当たり前。1日も早く線量を下げてほしい」。校長の斎藤嘉則は生徒の笑い声が消えた校庭を見つめた。
 「表土除去を行うかどうかは市町村の判断」。線量を下げる方策を発表した国の担当者は、そう付け加えた。仮置きした土の処理方法や表土の除去費用の問題も依然、解決されないままだ。
 「効果が分かっているのに、なぜ、何もかもを市町村任せにするのか」。ある市教委の幹部は国の対応に怒りを隠さない。しかし、国の担当者は法律や行政的措置が整っていないことを理由に挙げ、「国として保護者の不安の除去まで担うのは難しい」という。(文中敬称略)

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