東日本大震災アーカイブ

同じ被災者、親身に助言 大熊から福島に避難した菅波さん

 原発事故で福島市に避難している大熊町の司法書士菅波佳子さん(40)は司法書士の資格を生かし、被災者の相談ボランティアに取り組んでいる。「いつでも相談できる所があることを伝えたい。被災者の気持ちはよく分かるので、不安を解消したい」と奔走する毎日だ。
 菅波さんは震災当日、着の身着のままで自衛隊の車で郡山市に避難した。その後、いわき市の実家に移った。司法書士の仕事が気になり、4月上旬、県司法書士会事務局のある福島市に住居兼事務所のマンションを借りた。
 顧客の所在や安否の確認から取り掛かったが、資料は全て大熊町に残っていた。町に事業所の一時立ち入り許可を申請し、先月10日、事務所に戻り、2トントラックにパソコンと書類を詰め込んだ。現在、会津地方から浜通り、県外まで散った顧客に対応しながら、県司法書士会が各地の避難所で開いている無料相談会などに参加している。
 避難所では、相続など被災者に必要な法的な知識をアドバイスしたり、将来の不安など身近な悩みに応じたりしている。相談を通じて、家族を亡くした人には、まだ大切な人の死と向かい合えない人が多いと感じるという。「相談者が明るい表情を見せてくれるように気持ちをほぐしたい」と話す。
 菅波さんは平成18年8月、大熊町に「おおの司法事務所」を開所した。町民や会社の登記、債務整理などに当たってきたほか、身寄りのないお年寄りの成年後見人を担っていた。「大熊町の気さくな住民と、のどかな町並みは他にはない」。町の事務所に戻れる日が必ず来ることを信じている。

カテゴリー:福島第一原発事故