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原発賠償相談者殺到 8会場に3300人 県弁護士会初説明会 「どこに、どう請求」

大勢の避難者が集まった県弁護士会の説明会=25日午前11時10分ごろ、あづま総合体育館

 福島県弁護士会は25日、原発事故の損害賠償請求に関する初の説明会を県内8カ所で開いた。手続きでの証拠の必要性などを知ってもらう目的だったが、想定を超える計3300人が8つの会場に殺到した。「どこに、どう、何を請求すればいいのか」。長引く避難所生活の中、情報不足で国の紛争審査会が示した賠償対象の指針も、請求の窓口も分からない。頼るべき役所も遠い。原発事故に振り回される県民が、損害賠償という慣れない手続きの前で戸惑っている。

 説明会は福島(2カ所)、郡山、いわき、会津若松、白河、相馬、南相馬の8会場で開かれ、多い会場で700人以上、少ない所でも約220人が訪れた。どの会場も想定外の避難者であふれた。

 福島市のあづま総合体育館では午前10時半から開始予定だった。しかし、予定していた200人用の会場にはまるで入りきらず、急きょ11時からも説明会を開き、約400人に対応した。

 いわき市ラトブ内のいわき産業創造館では想定した定員の約7倍の700人以上が詰めかけた。会場に入りきれない来場者からは怒号まで飛び出す。資料も足りず、中には外部の駐車場が満杯で説明会が終わるまでに入場できなかった人もいた。

 各会場では基本的な疑問が相次いだという。いわき会場を訪れた富岡町からいわき市に避難している無職門馬勝歳さん(68)、征子さん(69)夫妻は「家や土地、家財道具など、家の中にあるすべて物を補償してもらうためにはどうすればいいのか聞きに来た」と切実な表情で訴えた。

 弁護士会はこの日の説明会で、避難者が損害賠償請求をする際に必要となる領収書などの証拠を残すことなど、より詳しい法的手続きについて説明しようとした。

 ところが、説明会後に寄せられた質問や相談は、請求に関する基本的範囲や「精神的損害」といった原子力損害賠償紛争審査会の一次指針・二次指針ですでに示されている賠償対象となっている項目についてが多かった。相談に応じた弁護士の一人は「原発事故に伴う賠償の対象範囲や方法が周知されていないことが明らかになった形だ」と住民の不満を代弁した。

 弁護士会は郡山市のビッグパレットふくしまで実施した説明会の様子を録画。他都道府県の弁護士会の協力を得て、映像を使い県外の避難者に向けた周知も計画している。さらに、7月第2週から県内8会場で面接相談を実施する方針。

 4月から家族5人で会津若松市に避難している大熊町の会社員根本薫さん(35)は「賠償まではまだまだ先が長いと感じた。領収書をきちんと保管したり(支出の)メモを取ったりするようアドバイスを受けて参考にはなったが...」とため息をついていた。


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■メモ残しまず証拠を
 説明会ではチャート図を使って、損害賠償手続きの流れを説明した【上表】。
 最初には被害の申告の準備としてメモなどを残し証拠をそろえること、合意や示談では紛争審査会の仲介やADRによる解決などがあることが紹介された。

■個別記録ノート配布 県弁護士会準備分足りず
 弁護士会は原子力災害に関する損害賠償に備え個別の損害や行動記録などを書き残せる「被災者ノート」を作製し、説明会で配布したが各会場とも準備した数では足りなくなった。
 いわき市のラトブ周辺は説明会に参加する人と週末の人出で混雑し、駐車場は長い列に。富岡町本町から市内のアパートに避難している自営業の男性(48)と妻(48)は駐車場に入るのに1時間以上かかったという。高校生の長女(16)と暮らしており「娘を進学させたいが今は収入がなく日常生活を含めて不安。賠償に役立つ記録ノートの記載方法などを聞きに来たが間に合わなかった...」と残念そうに話した。
 弁護士会はノートを増刷する予定。同会のホームページでもダウンロードできる。

■全体像は不透明 紛争審査会
 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は既に、賠償の範囲などを定めた一次、二次指針を示しているが、中間指針を7月中に示す見通しで全体像が見えないのが現状だ。
 一次指針では、避難や屋内退避の指示を受けた住民の避難費用や精神的苦痛、営業損害、本来得られたとみられる売り上げなどを賠償の対象とした。二次指針では、農産物や観光での風評被害などを追加している。

■県、相談窓口設置 土、日曜も対応
 県は原発事故の賠償について原子力損害賠償に関する相談窓口を土日祝日も設けている。ただ、今回会場を訪れた避難者の中には「気軽に相談できる窓口がない」と指摘する声もあった。
 県は「指針の概要は説明できるが、法律的解釈などはスタッフでは限界がある」としており、毎週水曜には弁護士も応じている。同窓口は電話024(523)1501

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