東日本大震災アーカイブ

広野の民家で家電盗む 避難準備区域 容疑者5人逮捕

 東日本大震災と福島第一原発事故の被災地を狙った窃盗事件を捜査していた、いわき中央署と双葉署は県警捜査三課、県警機動捜査隊の応援を受け2日までに、緊急時避難準備区域に指定されている福島県広野町の民家から家電製品などを盗んだ窃盗などの疑いで、いわき市平中神谷字北鳥沼32ノ2、無職松本直樹容疑者(21)ら少年を含む五人を逮捕した。両署は20件を超える窃盗を繰り返していた疑いがあるとして追及する。
 松本容疑者のほかに逮捕されたのは、いわき市平上片寄字藤倉41、とび職菅波大樹容疑者(21)、同市の無職男(20)=犯行当時(19)=と無職少年(18)、電気工少年(17)の四人。
 両署の調べでは、松本容疑者と無職少年、電気工少年は4月下旬、広野町の男性(45)宅から現金3万5千円、商品券や家電製品など57点(計73万7千円相当)を盗んだ疑い。無職男と無職少年は5月下旬ごろ、同町の男性(46)宅からビデオレコーダー一台(3万円相当)を盗み菅波容疑者に売却を依頼。菅波容疑者はいわき市のリサイクルショップに持ち込み1万円で売った盗品等処分あっせんの疑い。5人は遊び仲間で、調べに対し「遊ぶ金が欲しかった」といずれも容疑を認めているという。
 両署によると、5人は自家用車数台に分乗するなどして現場に向かい、いずれも留守宅の窓ガラスを割って室内に侵入。盗んだ高級ブランド品のバッグや貴金属など数十点を売却していた。
 広野町は4月22日に避難指示区域から緊急時避難準備区域に変更され、六号国道や県道いわき浪江線の検問がなくなった。松本容疑者らは立ち入りが比較的容易になったのを狙い、犯行を繰り返していたとみられる。また、室内の照明で留守かどうかを確認できる午後6時から午後10時ごろの間に犯行を重ねていたとみられる。
 両署は容疑者宅などから大型テレビ、ゲーム機、DVDレコーダー、DVDソフトなど100点以上を押収した。

[窃盗など175件 一時帰宅で被害申告 狙われた警戒区域 監視網すり抜け犯行も]

 東京電力福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域への避難住民の一時帰宅で窃盗などの被害申告が相次ぎ、2日現在で175件に上ることが県警のまとめで分かった。警戒網をすり抜けて区域内に侵入し、犯行に及ぶケースもあるとみられる。県警は警戒活動の部隊を増員するとともに、一線署や地元の防犯パトロール隊などとも連携し、自由に立ち入りできる緊急時避難準備区域を含め区域内の防犯態勢を強化する。
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[県警パトロール強化]

 県警によると、被害申告は5月10日に一時帰宅が始まって以降、警戒区域となっている南相馬、浪江、双葉、大熊、富岡、楢葉など広範囲の市町から出ている。2日の大熊、双葉、浪江各町の一時帰宅では住民から窃盗など計15件の申し出があった。
 これまでの申告では、浪江町の男性方から現金約600万円が盗まれたほか、富岡町の女性方から計100万円の指輪二点がなくなっていた。テレビやパソコン、記念硬貨などの金目の物を中心に申告が相次ぎ、仏像やタイヤなどもある。手口は窓ガラスを壊して侵入するケースが多く、急いで避難したとみられる無施錠の住宅を狙った犯行も目立つ。
 県警は4月に入り、20㌔圏の主要道路で検問を実施し、立ち入りを監視している。さらに、被災地パトロール隊や特別警備隊などを組織し、他県警の応援も得て区域内の警戒に当たってきた。
 申告があった被害の多くは、こうした活動を本格化させる以前に発生したとみている。ただ、検問などを避け山道などを通って区域内に侵入し、犯行に及んでいる可能性もあるとして警戒を強めている。2日には県警と茨城県警、福島、伊達、南相馬各署から計約50人を投入して警戒区域内の初の合同防犯パトロールを実施した。

[ATM被害も相次ぐ]

 浜通りの被災地ではコンビニエンスストアや金融機関の現金自動預払機(ATM)を狙った窃盗被害も相次いでいる。
 これまでに計32カ所のATMが壊され、総額4億7700万円の被害が判明しており、県警が捜査を続けている。

[自治体は防犯隊]

 被災地の窃盗被害は、原発事故で計画的避難区域や緊急時避難準備区域になっている自治体でも多発が懸念されている。警戒区域と比べて出入りが比較的自由だったり、立ち入りが制限されていないためだ。
 全村が計画的避難区域の飯舘村は緊急雇用した住民約350人による「いいたて全村見守り隊」を結成。川俣町では計画的避難区域の山木屋地区で地域安全パトロール隊約60人が警戒活動に当たっている。
 同区域がある葛尾村も臨時職員として委嘱した村民約50人で葛尾特別警戒隊を編成した。
 立ち入りが自由な緊急時避難準備区域の広野町では避難者らから「空き家状態の家屋を狙った犯罪が起きている」と不安視する声が相次いでいる。いわき市に避難している主婦(51)は「自分の友人も貴金属類を盗まれた。民間の警備会社と契約し自宅に侵入警報などを付けたいが、費用を行政側が補助してくれるだろうか」と不安を口にする。
 広野町は5月以降、県緊急雇用創出基金事業を活用して町民ら八人を採用し、24時間態勢で防犯巡回を行っていた。しかし、町内全域を監視するのは難しく、その後も町に空き巣の被害を訴える苦情が寄せられたことから、新たな緊急雇用として自主防犯組織(仮称)を今月10日に発足させる。八人から40人に採用枠を拡大し、三交代で24時間町内を巡回する態勢を組む。
 県警は、こうした活動とも連携し、各区域内における被害抑止に全力を挙げる方針。

カテゴリー:福島第一原発事故