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まさか会津まで... 農家、広がる動揺

国産牛の陳列棚で品定めをする市民。本県産は並んでいない=福島市・ヨークベニマル野田店

 「まさか会津地方まで汚染されているとは」。放射性セシウムによる飼料用稲わらの汚染が福島県の会津地方に広がっていることが判明した16日、地元農家や関係者は言葉を失った。この日、郡山市や相馬市でも汚染が確認され、農家は国や県に一刻も早い対応を訴える。スーパーなどでは店頭から県産牛肉を撤去する動きが出始めた。

 県の肉用牛の出荷・移動自粛要請を受けて16日、喜多方市の会津地方JA畜産センターに集まった畜産関係者に動揺が広がった。

 「会津地方から(汚染された稲わらが)出るとは夢にも思わなかった」。喜多方市のJA会津いいで肉牛部会の湯浅治部会長は険しい表情で話す。「国などからもわらの取り扱いの指導はなかった」と怒りも隠さない。

 湯浅部会長によると、会津地方の畜産農家は通常、雪が降る前にわらを屋内に保管する。しかし、秋に長雨が続くと乾かしきれず、翌年春まで田んぼに置いておくケースもある。ただ、会津地方は放射線量が低く、汚染を心配する農家はいなかったという。同畜産センターは県の立ち入り調査で安全が確認されれば、22日に東京で開かれる共励会に会津牛を出品し、首都圏の市場関係者への売り込みを始める予定だった。

 喜多方市内の男性(55)は19日に一頭を出荷する計画も立てていた。「これで難しくなった。出荷を延ばすと牛の命にも関わる。暑さも続いており、健康な状態に保てるか心配だ」と頭を抱える。

 湯浅部会長は「生産者も消費者も安心するには全頭検査しかない。そうしないと、県内全部の畜産農家が駄目になる。国や東電の責任でしっかり対応してもらいたい」と語気を強めた。

■県内スーパー販売自粛 消費者「安全基準明確に」

 県内の主なスーパーは16日までに県産牛の販売自粛に乗り出した。

 福島市のヨークベニマル野田店は県が畜産農家に出した出荷・移動自粛要請を受け、売り場の棚から商品を取り除いた。担当者は「この事態を早く収拾しないと地元産を敬遠する傾向が強まるでのは」と懸念する。

 リオンドール(本社・会津若松市)も同様の対応をしている。担当者は「会津では地元商品を買おうという動きが強い。県産牛の販売を自粛しなければならないとは...」と無念の表情を見せる。

 コープふくしま(本部・福島市)の担当者は「販売自粛は県民の一人として残念」と話し、生産者の心情も思いやった。

 一方、いちい(本社・福島市)は17日の県産牛の特売ができなくなり、急きょ北海道産を並べる。担当者は「このままでは農業立国・福島が駄目になる」と国や県に早急な対応を求めた。

 消費者の気持ちも複雑だ。いわき市小名浜の自営業越山健蔵さん(64)は「地元産の魚だけでなく県産牛肉まで食べられなくなるとは思わなかった。次は一体、何が...」と心配する。鏡石町の会社員稲田勝仁さん(44)は「国は何の食材が安全で何が危険なのか基準を明確にするべき」と話した。

■郡山の畜産農家「大きな痛手」

 JA郡山市の幹部は県県中家畜保健衛生所に駆け付け、事実確認と今後の対応に追われた。

 郡山市で子牛など5頭を飼育している繁殖農家の男性(48)は「出荷停止が子牛の競りの時期まで延びると、売れなくなるので大きな痛手になる」と不安がる。

 同JAは4月下旬から4回にわたり、原発事故後に屋外に置いていた稲わらを牛に食べさせないよう文書で指導していた。

 14日に県の指示で畜産農家を調査した結果、97戸のうち2戸から「事故後に屋外にあった稲わらを食べさせていた」との報告があり、今回の汚染が判明した。

 1戸は約70頭、もう1戸は約30頭を飼育する大型肥育農家という。

 相馬市では8戸の農家が肉用牛を育てている。肉牛飼育に40年以上携わってきた女性(84)は「安全でおいしい牛肉を提供したくて育てているのに残念。とにかく早く原発事故を収束させてほしい」と訴えた。

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