原子力安全・保安院が東京電力福島第一原発1~4号機の安全確保状況について「水素爆発が生じる可能性は低い」と評価した4日、関係自治体の首長からは住民の帰宅に向け期待の声が上がった。ただ、避難中の住民にとっては土壌汚染などへの懸念が残り、心境は複雑だ。
1~4号機が立地する大熊町の渡辺利綱町長は「収束に向かっていることは歓迎したい。事故収束の工程表を前倒しできるよう、今後もしっかり取り組んでほしい」と注文する。緊急時避難準備区域と警戒区域が混在している川内村の遠藤雄幸村長は評価結果を歓迎しながら「今後は緊急時避難準備区域解除の日程や、帰郷の条件整備の段階になる」との見方を示した。
一方、緊急時避難準備区域内の南相馬市原町区に暮らす自営業小沢洋一さん(56)は「事故原因の解明が細部まで進んでいない中、原発事故が拡大する危険性が低くなったと判断していいのか」と疑問視する。
楢葉町から会津美里町に避難している男性(37)の自宅は緊急時避難準備区域にあるが、町の大半が警戒区域になっている。仮に避難準備区域が解除されても日常生活を営めるかどうかの心配は尽きず「地元に帰れるかもしれないという喜びと、帰っても大丈夫かという不安の半々だ」と戸惑う。
田村市都路町の緊急時避難準備区域から同市船引町の仮設住宅に暮らし、自治会長を務める宗像勝男さん(66)は、解除されてもすぐには帰れないと感じている。「入居者には小学校付近の土砂崩れや自宅周辺の放射線量への不安の声が多い」と話す。いわき市に避難している広野町の無職渡部新一さん(79)は「何よりもまず除染の計画を示すことが先決」と指摘した。
(カテゴリー:福島第一原発事故)