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厳戒検査でも残る不安 コメ安全PRに課題

 コメは国民の主食。安全性に対する関心は極めて高く、本格的な収穫期に向け県は「厳戒態勢」で検査に臨む。県産米の安心を全国にアピールする方針だが課題も多い。

■やればやるほど

 県は農林水産省の方針に基づき、今年産米の放射性セシウム検査を、収穫前の予備調査と収穫後の本調査の2段階で実施する。本調査のサンプル数は同省の方針の2倍に増やして対応する。肉牛の出荷停止問題で県産農産物の風評被害拡大が懸念される中、本県の基幹作物のコメの安全性を全国に発信する狙いがある。

 ただ、県が作付け前に県内百カ所余の地点を抽出して行った土壌調査では、全ての農地で放射性セシウムが検出された。農水省は土壌に含まれる放射性セシウムの10%は玄米に吸収されると分析しており、県産米から微量が検出される可能性は大きい。検査を行えば行うほど、「放射性物質含有」の結果を全国に紹介する事態にもなりかねない。

 消費者に動揺が広がる懸念もあり、県水田畑作課の職員は「セシウムが検出される可能性は否定できない。ただ、安全性に問題のあるコメは流通しないので冷静に判断してほしい」と訴えるのが精いっぱいだ。

■眠れない夜

 県内では9月下旬からコシヒカリ、ひとめぼれなど主力品種の検査が本格化する。

 県の土壌検査で、政府の作付け制限の基準値をわずかに下回る土1キロ当たり4400ベクレル程度の放射性セシウムが検出された本宮市長屋地区。地区内の農家の男性(64)は十月初旬にコシヒカリを収穫する。

 実りの秋を心待ちにする時期だが、今年は農作業中も心が沈む。「基準値以上のセシウムが出たら...」。不安は尽きず、眠れぬ夜が続く。男性は原発事故を引き起こした東京電力と監督責任のある国は十分な賠償を農家に行うべきだと説く。「土に生きる人間の苦しみを、東電役員と国の役人は理解しているのか」

■手探り

 県産米の4割程度を集荷する全農県本部は22日までに、全国の卸業者と4万1000トンに及ぶ今年産米の収穫前契約を結んだ。全国的にコシヒカリの需要があり、昨年の3倍ほどの契約量に上る。

 しかし、担当者の表情は厳しい。県産米の検査で放射性セシウムが検出されれば、市場から敬遠される懸念があるからだ。売れなければ価格は大きく下落し、大量の在庫を抱える事態も覚悟しなければならない。「販売の見通しが立たない。販路確保は手探りだ」とため息をついた。

 一方、収穫米のほとんどを自前のルートで販売している農家にも影響は及ぶ。JAの系統出荷に頼らないだけに、取引先から購入を断られれば収入は絶たれる。首都圏などに販路を持つ棚倉町の稲作農家の男性(54)は「最悪の場合、先祖代々からの稲作を諦めることも考えている」と天を仰いだ。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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