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見えぬ安心転校止まらず 学校、周辺の除染進度に差 新学期戻る児童も

 福島市や郡山市などでは放射線量への不安から小中学生らの転校が止まらない。「子どもの安全・安心が守れるのか」「一刻も早い除染を」。県内の学校や地域で除染が進まないことに保護者らのいら立ちは募る。一方で、夏休みに除染に力を入れ、一足早く新学期を迎えた相馬市では、東日本大震災後に転校した児童が戻りつつある。子どもたちが元気に学校に通う姿を誰もが願っている。

■消えない不安

 「市外に引っ越したいけど、夫の仕事を考えると無理かな」。福島市の南向台小に通う次男がいるパート女性(46)は2学期を前に、子どもの健康への不安が消えない。福島市の南向台では24日から放射線量の詳細調査が行われる。震災前は近くの公園で子どもたちは野球などを楽しんでいた。だが、除染が進まない現状では、心ならずも外での遊びを禁止するしかない。

 避難はしたが、それで良かったか悩む声も多い。福島市に住んでいた主婦(41)は3カ月前、小学生と幼稚園児の子どもと3人で横浜市に避難した。最近、子どもたちは「福島に帰りたい」と口をそろえる。長男(6つ)は通っていた幼稚園の教諭との電話で「僕のことを忘れないで」と話していた。胸が苦しくなった。自分も帰りたい。夏休みの間に除染が進むと期待した。だが、大きな変化は感じられなかった。「1日1時間でも、数メートルでも除染していたら...。行政は初めの一歩すら踏み出していない」と失望した。

 郡山市の会社員男性(46)は長男が薫小に通う。同校では震災の1カ月半後に他に先駆けて校庭の表土が除去されたが、処分先が決まらないため今もグラウンド内に仮埋設されたままだ。学校の様子を目にするたび、「行政は毎日何をしてるのか。これで子どもの安全が守れるのか」と、いら立つという。教育委員会は放射線量が高い通学路の変更を検討している。「さっさと除染すればいい。その場しのぎは、もうたくさんだ」と怒りをあらわにした。

■「県外へ」加速

 県北地方の教育関係者の一人(48)は、夏休み前ごろから、児童・生徒の県外への転校が加速しているような気がしている。県教委の公立学校分の調査によると、県外への転校者数の合計は7月15日で、小学生が5710人、中学生が1962人を数えた。夏休み中でさらに、小学生が918人、中学生が163人転校した。高校生も2学期までに1077人が県外に去った。このうち、4分の3程度が放射線による不安を理由に挙げているという。

 県教委の担当者は「子どもの健康を思う保護者を無理に引き留めるわけにいかない。県内に呼び戻すには除染で環境を改善するしかない。ただ、安全の根拠を国が示さなければ、決め手にはならない」と対応の難しさを打ち明けた。

■徐々に

 一方で、好転への兆しも見え始めている。23日、県内のトップを切って2学期の始業式が行われた相馬市。桜丘小では、一度は市外に転校した9人が夏休みを経て帰って来た。愛知県から4カ月ぶりに戻った渡辺佑梨さん(5年)、広島県から両親の元に帰り家族5人の生活を取り戻した小川琉世君(2年)は「放射線は目に見えないので怖いが、友達とまた会えてうれしい」と喜ぶ。山下富夫校長は「学校にいる間は、落ち着ける環境をつくってあげたい」と子どもたちの心を思いやる。

 中村二小の場合も震災後、約50人が転出したが、2学期までに半数近くが戻って来ている。市教委によると、他の小中学校でも同様の傾向が見られる。これまで独自に学校の放射線量を調査し、各校の除染活動も推進するなど、放射線量の低減策に力を入れてきた。児童・生徒数が増加した理由について、「保護者の間に、放射線量が比較的低い地域であることが浸透してきたからではないか」と分析している。

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