政府の原子力災害現地対策本部は、福島市大波地区で住民説明会を開き、既に固めていた特定避難勧奨地点に指定しない方針を正式に示した。説明会に出席した住民からは自主避難しか選択肢がなくなったとする落胆や、徹底した除染を求める声が相次いだ。
■「自主避難しかない」
大波小で午後7時から始まった説明会は、約300人の地元住民から政府や市の対応を問う質問が次々と出され、約4時間に及んだ。
冒頭で政府の担当者が特定避難勧奨地点に指定しない理由を説明した。地区内370地点の放射線量の調査の結果、最大で毎時2.9マイクロシーベルト(地上1メートル)だったことを提示した。特定避難勧奨地点の指定基準の年間20ミリシーベルトを越えると予測される毎時3.1マイクロシーベルトを上回った地点はないとした。
住民の一部は、庭先と玄関先しか調査しない測定の不備などを指摘。「子どもや妊婦のいる家庭は(特定避難勧奨地点に)指定すべきでは」などと求めた。大波小に2人の娘を通わせる女性は(36)は「娘の同級生は半分になっている。指定されないなら自主避難を考えるしかない」と失望の色を浮かべた。
一方、指定の対象外になったことを冷静に受け止める住民も。農業男性(64)は「地域を再生させるためには一安心。ただ、しっかりと除染を進め、安心して住める環境にすることが大切だ」と訴えた。
説明会では、市が策定を進めている「市ふるさと除染計画」の基本的考え方も示された。個人の住宅などについて原則として市民が除染することを求め、除染の手法を示した「市除染マニュアル」の全戸配布を検討している。全国から除染ボランティアも募る。
(カテゴリー:福島第一原発事故)