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【警戒区域 窃盗やまず】人手、線量、捜査の壁 摘発へ対策正念場

福島第一原発から半径20キロ地点で検問する規制部隊=8日、浪江町

 東京電力福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域の窃盗被害申告が相次ぐ中、県警は摘発専門の部隊を編成し、今月から不審者発見に本腰を入れ始めた。19日からは2巡目の一時帰宅が始まり、住民による新たな被害申告も懸念される。ただ、警戒区域への道路の封鎖や人員に限界があり、立ち入り許可を受けた人たちの「目的外」の行動も捜査を妨げる。部隊の放射線管理などの課題も山積している。

■シフト

 18日夜、県警本部員と一線署員らで編成した摘発部隊数十人が警戒区域に入った。6号国道など幹線道路を通る車を見つけては停止を求め職務質問する。19日未明まで不審者の捜査が続いた。

 警戒区域への一時帰宅や車の持ち出しの際に住民が申告した被害は9日現在、602件に上る。7割に当たる431件が空き巣で、主に現金や貴金属類が盗難に遭っている。警戒区域の多くを管轄する双葉署管内の今年の空き巣被害は8月末現在、375件と前年同期の15件から激増しているが、ほとんど摘発に至っていないのが現状だ。

 「警戒区域に部隊を投入し検挙を強化する」。松本光弘県警本部長は7日、摘発部隊の運用方針を明らかにした。県警察官に加え、11日からは他県警の応援部隊も警戒区域内に入らせ、24時間体制で職務質問を始めた。警戒区域に立ち入る車両を監視する「よう撃捜査支援装置」(監視カメラ)も設置し、「容疑者」を確保する体制にシフトした。

 ただ、避難先の住民からは「被害が拡大する前にやるべきだったのでは...」と疑問の声も聞かれる。

■道路封鎖に穴

 県警は19日現在、700人以上の態勢で避難区域内外の警戒に当たっている。警戒区域周辺の道路は約100カ所を封鎖した。

 それでも封鎖地点脇の土手や畑を通り抜けた跡が確認され、進入防止柵(バリケード)を動かそうとしていた人物も目撃されている。その都度、防止柵を二重三重にしているが、「対策は後手。高い壁でも造らないと完全な封鎖はできない」と限界感が漂う。

 放射線も捜査の妨げになっている。一部に高い線量の地域があり、何度も区域に入ることを想定した線量管理が必要になるからだ。県警幹部は「線量管理だけは徹底しなければ、継続した運用はできない」と言い切る。線量が高い区域内の警戒は県警が担い、他県警への要請に二の足を踏んだ面も摘発部隊の本格運用が遅れた理由の一つに挙げる。

■目立つ目的外

 県警は当初、福島第一原発事故で住民が避難した混乱期に窃盗犯が警戒区域に侵入したと見ていた。しかし、8月5日に警戒区域内の富岡町の銃砲店から散弾銃5丁などが盗まれた窃盗申告で考えは一変する。経営者が6月15日に一時帰宅した際には保管庫にあった。「まだ窃盗犯に入られている」。多くの県警幹部が確信する。

 数日後、県警は本部員ら約60人を集めて摘発部隊を編成。防護服を着て警戒区域に車を走らせ、人がいれば職務質問した。「自宅周辺の様子を見に」「猫に餌を与えたくて...」。復旧作業、原発事故の収束作業などで立ち入りを許可された人たちの「目的外」の行動が目に付いた。

 今月4日、摘発部隊が警戒区域内で1台の車を止めた。乗っていた男性は親類宅に寄った後、勤務先から無断でもち米30キロを持ち出していた。男性は立ち入りを許可された知人の車を借りていた。

 「窃盗犯は警戒区域内を自由に通行できる許可制度を悪用しているのかもしれない」。捜査員らは許可車両にも目を光らせ始めた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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