放射性物質に汚染された疑いのある砕石の出荷問題で、富岡町の双葉砕石工業が採石した石を二本松市の建設会社が同市と福島市の一戸建て住宅計約10棟、大手住宅会社が賃貸アパート9棟の計約20棟の建設にそれぞれ使用していたことが18日、新たに分かった。高速道路のパーキングエリアをはじめ川俣、大玉各町村の道路整備などで使われていたことも判明した。範囲は拡大を続けており、周辺住民から国や県の一刻も早い対応を求める声が強まっている。
■松川PAでも
二本松市の建設会社は、それぞれ住宅の基礎部分や駐車場などに生コンとして使用した。同社は家主に事情を説明した。
一方、賃貸アパートは大東建託(本社・東京)が県内の3カ所に建設し、それぞれ生コンを基礎部分や駐輪場の舗装などに使った。建設場所は明らかにしていない。
両社は建物内外などの放射線量を独自に測定している。いずれも周囲の数値との差はなかったとしている。
東日本高速道路によると、高速道路は福島市の東北自動車道上り線福島松川パーキングエリア(PA)施設裏側の斜面補修工事で生コンを使用した。
このほか、大玉村で村道側溝の集水ます8カ所、本宮市で雨水幹線1カ所で生コンが利用されていた。各市村によると、いずれも周辺の線量と変わりはなかったという。
二本松市では私道約10カ所と駐車場1カ所にも敷石として使用されていた。川俣町では計画的避難区域の山木屋地区をはじめ各地の町道や私有地などの工事現場約10カ所で砕石が使われていた。
問題の砕石や生コンを資材にした現場は県内で1000カ所近くに達すとみられており、流通・使用範囲はさらに拡大する様相を呈している。
■身近な危険
問題が発覚したマンションをはじめ、学校や道路などで続々と使用が明らかになった二本松市に住む男性(77)は「身近な場所にどんな危険性が潜んでいるのか分からなくなった。行政などが詳しく調べ、適切に対処してほしい」と注文する。
汚染が疑われる砕石が使用されていた大玉村の集水ますの近くの女性(70)は「近所で使われていたことに驚いたが、線量が低ければ構わない。でも、身近にあるのは少し気持ち悪い」とうんざりした表情を浮かべた。
今後への影響を懸念する声も出ている。須賀川市の建設会社役員は「建築資材が入手困難になり、復旧・復興が遅れては困る」と危機感を抱く。
■責任どこに
二本松市は18日までに、震災後の市発注工事の全現場を対象にした放射線量調査をほぼ終えた。民間工事は件数が多く、市職員だけでは対応できないため、市内の業者に協力を依頼した。震災後に実施された民間工事の現場で放射線量を測定してもらい、汚染が疑われる砕石が使われた現場の特定を目指す。
安達太良建設協会と二本松管工事組合が市から線量計を借りて協力する。同協会の本多勝一会長は「発注者や市民に1日でも早く安心してもらいたい」と話す。
本宮市と大玉村では18日現在、公共施設、教育施設での砕石使用による高い線量は確認されていない。ただ、今後、民間住宅で高い線量が確認された場合、市村ともに「住民の健康のために放ってはおけない。自治体として、住民の意向を聞き、引っ越しなどの支援に当たりたい」としている。
しかし、前例のない事態で、責任の所在がはっきりしないこともあり、「国や県と調整しなければ動きづらい。もし多数発見されたらどうするか」と苦悩し、国や県の迅速な対応を求める。
一方、経済産業、国土交通両省が汚染砕石の流通ルートを調べているが、調査対象は広範囲にわたり、依然、難航している。調査完了後の対応も決まっていない。内閣府原子力被災者生活支援チームの担当者は「全ての現場で放射線量を調査するのは現実的ではない。調査結果が出ても、次の手が難しい」と話す。
(カテゴリー:3.11大震災・断面)