東日本大震災アーカイブ

【復興庁業務開始】多難な「再生」へ一歩 併任や職員数 課題

 東日本大震災の被災地再生に向け、復興庁が10日、業務を開始した。野田佳彦首相はこれまで復興対策担当相を務めてきた平野達男氏を初代の復興相に任命。出先機関として福島、盛岡、仙台の3市に設置した復興局の他、福島、岩手、宮城3県に2カ所ずつある支所、青森県八戸市と水戸市の事務所も業務を始めた。ただ、職員の多くは省庁から出向した併任の上、十分な数がそろわないなど、課題も抱えながらのスタートとなった。
 復興庁が業務を開始した10日、野田佳彦首相は、復興庁の本庁が入る国会近くの民間ビルで平野達男復興相とともに看板を掲げ「被災地の期待に応えなければいけないという責任の重さをずっしりと感じた」と話した。看板には、津波に耐えた「奇跡の一本松」で知られる岩手県陸前高田市の高田松原の松が使われた。
 首相は復興庁発足を受けた同日夕の記者会見で、復旧復興に向けた迅速な対応を強調するとともに、自らリーダーシップを発揮して予算配分などで「省庁の縦割りの壁を乗り越える」と述べた。

■準備半ば
 福島市のJR福島駅前にあるAXC(アックス)の7階で行われた福島復興局の開所式。「福島の復興という歴史的仕事に参加しているという誇りを持って仕事をしてもらいたい」。吉田泉復興政務官(衆院本県5区)から訓示を受ける職員の表情は厳しかった。職員はすぐに業務に入り、市町村から申請のあった復興交付金の審査などに追われた。
 慌ただしい中でのスタートだ。室内には運送業者が出入りし、パソコン設置が間に合わない机もあった。いわき、南相馬両市で支所を開所する手伝いで数人は出張していた。
 いわき市のいわき地方合同庁舎の会議室を利用して設けられた支所は開所しても、長テーブルや電話機が置かれた程度。室内にテレビや新聞はなく、書類を整理する棚も見当たらない。武藤孝雄支所長は「これから机など必要な備品を運び込む予定です」と状況を説明する。県民の期待を背負いながら、準備は半ばのような状況だ。

■カバーできるか
 福島復興局は30人程度、いわき、南相馬の支所は各5人程度の職員の配置を予定していた。しかし、スタート時、復興局には23人、支所はいわきが2人、南相馬は3人のみにとどまっている。
 しかも職員の多くが複数の省庁からの出向組で構成される併任体制となっている。
 市町村の復興特区や復興交付金の申請の支援、避難住民の帰還支援などが役割の復興局。自治体からの要望の窓口となるほか、今後は市町村に出向いて助言する必要も出てくる。膨大な業務量を担う体制としては十分な職員数とは言えない現状だ。県議の1人は「全県をきめ細かくカバーできるか疑問だ」と指摘する。
 同局は非正規職員の雇用などで体制強化をする考えという。しかし、省庁の意向にとらわれず縦割りの弊害をなくした対応ができるかは課題だ。

■遅過ぎる
 「早くできなかったかという思いはある」。復興庁の発足を受け、佐藤雄平知事は期待の言葉より先に、不満を口にした。
 県は東日本大震災、東京電力福島第一原発事故の発生直後から、一元的に被災地の要望を受けて事業化に取り組む組織設置を国に要望し続けてきた。しかし、ようやく実現するまでに11カ月もかかった。
 これまで多くの課題で国の対応が後手に回っていたことに対する県の不信感は大きい。県関係者は「復興庁設置を喜んでばかりはいられない」と期待だけではない思いを口にした。

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