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【本県加工食品の輸出】販路拡大に風評の壁 アジア出荷激減 国や県懸命に安全アピール

出荷予定だった商品のパッケージを手にする五十嵐製麺の五十嵐社長

 東京電力福島第一原発事故による風評被害は、本県が販路拡大を図っていた加工食品の海外輸出に大きな打撃を与えている。有力な輸出先である中国などアジア諸国は輸入停止措置を取ったり、検査証明書を求めたりするなど、発生から1年近くになる現在も"警戒態勢"を解いていない。県県産品振興戦略課によると県貿易促進協議会に加盟する県内企業の出荷額は12月分だけを前年同期と比べてみても700分の1と著しく減少している。国や県は外交ルートなどを通じて規制の緩和を働き掛けるなど懸命の努力を続けている。

■苦悩
 「パッケージも作った。味も熟考した。あとは輸出するだけだったのに...」。喜多方市の五十嵐製麺の五十嵐隆社長(58)は試作商品を手に無念そうに語る。
 同社は販路拡大を目指して平成17年から輸出事業に着手。中国・上海、香港、台湾を中心に自家製ラーメンを輸出していた。原発事故前の輸出額は100万円ほど。売り上げ全体に占める割合はわずかだが、着実に販路を切り開いていた。一昨年に現地の好みに合わせて「とんこつ味」を開発。躍進するアジア市場で「喜多方ラーメン」のブランド化に挑むつもりだった。その直後、原発事故は起きた。
 中国や台湾は全ての本県産食品の輸入を停止した。目の前が真っ暗になった。しかし、最近になって取引実績のあった香港が加工食品について、現地のサンプル検査に合格すれば輸入できる態勢となった。五十嵐社長は輸出再開に向けて18日から現地入りする。
 県貿易促進協議会に加盟する県内企業の一昨年12月の出荷額は約720万円だったが、原発事故後の昨年12月は1万円余と大幅に落ち込んだ。輸出は民間ベースで進められるケースが多く、国も正確な統計データを把握していない。しかし、アジア主要国の取引が滞っているため農水省国際経済課(経済連携チーム)は「福島県内の加工食品業界への影響は少なくない」とみている。

■事態打開
 二本松市にある大七酒造。平成8年から日本酒の本当の魅力を伝えようと輸出を始めた。これまでにアジアをはじめ北米、南米、欧州、中東と少なくとも10カ国以上に販売し、近年は海外からの個人注文も増えていた。
 しかし最近の海外での原発事故の風評被害は根強いものがあるという。ある国では放射性物質の検査証明書の添付で輸出可能となったにもかかわらず、現地の輸入業者が"自主規制"して取引を断ってきた。計画的避難区域で採取された砕石が二本松市のマンションなどに使用されていた事例を引き合いに不安視する声もあった。太田英晴社長(51)は「アジアは重要。粘り強く安全の情報発信をしていくしかない」と分析している。
 欧米市場に活路を見いだそうとする動きもある。白河市大信の明陽食品工業は安全・安心にこだわったジャムや食用油の生産で高い評価を得ている。原発事故以降は欧米の食品見本市に積極的に出店している。郭大1000社長(57)は中国・北京出身。「確かに中国市場は巨大で魅力的だが、欧米では風評が広がっていない。『良い物は良い』と認める気風がある」とアメリカに照準を定めている。
 食品輸出担当の農水省国際経済課(経済連携チーム)は各国に幹部職員が出向いて現状を説明する一方、閣僚級会合などの機会を捉えて輸入再開を打診するなど直接的な働き掛けを進めている。これまでにカナダ、ミャンマー、チリで規制措置が完全に解除された。
 ただし、説明を尽くしても最後は各国の判断となる。「自国民の安全を守ろうとする姿勢を覆すのは厳しい」というのが現状だ。

■理解の輪
 日本貿易振興機構福島貿易情報センター(ジェトロ福島)は3月12日、海外バイヤーを県内に招いて「食品輸出商談会」を郡山市で初めて開催する。
 輸出相手国の規制が続く中、海外バイヤーに直接、商品の魅力と安全性を訴えるとともに、海外進出への関心や動きに停滞を招かないよう配慮する。本県産の加工食品に関心を持つアメリカ、チリのバイヤーを招いて自社製品をアピールし、海外輸出の道を開きたい考えだ。参加枠の20社は既に埋まった。
 センターの永松康宏所長(43)は語る。「激しい国際競争の中で本県製品が埋没する事態を避けなければならない。根気強い情報発信と海外関係者に積極的に県内に足を運んでもらい理解の輪を広げていく必要がある」

【背景】
 東京電力福島第一原発事故の直後から国際社会は相次いで日本産の食品・加工食品を輸入停止とした。農水省によると、13日現在、加工食品を含む全ての食品を「輸入停止」としている主な国と地域は【表】の通り。特にアジアや中東など距離的に近い国の対応が厳しい傾向にある。輸入停止のほかにも、ほとんどの国や地域が政府作成の放射性物質の検査証明書の提示を求めているほか、自国内でのサンプル検査などを義務付けている。これまでに出荷規制を解除したのはカナダ、ミャンマー、チリのみ。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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