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【24年産米 作付け】迫る期限 調整難航 国「制限し信頼回復」 市町村「全域、農家のため」

 平成24年産米の作付けをめぐる国と県内市町村の意見が対立し、調整が難航している。農林水産省は「県産米の信頼回復のため」とし、放射性セシウムが一定の値を超えた地域で作付けを制限したい考えだ。一方、市町村側は「生産意欲を維持する必要がある」として、全域での作付けを認めるよう求めている。田植え準備を控え、農水省は今月中に作付け方針を決める予定だが、「着地点」が見いだせずにいる。

■譲れない
 農林水産省穀物課の職員が15日、重い足取りで伊達市役所を訪れた。24年産米の作付けをめぐり、市農林課の担当者と協議するためだ。
 「水田を守り、生産意欲を維持するため全域で作付けしたい」。市の訴えに対し、農水省側は「持ち返って検討する」と返答するにとどまり、協議は平行線をたどった。
 食品の放射性物質の基準値が4月から100ベクレル以下に厳格化されることを踏まえ、農水省は県のコメ検査で放射性セシウムが1キロ当たり100ベクレル超500ベクレル以下だった地域での作付けを制限したい考えを示している。伊達市の場合、500ベクレル超も含めると市内の水田の約6割が100ベクレル超の地域に該当する。市農林課は「国の提案をそのままのめば、水田は荒廃し農家がなくなってしまう。原因究明のためにも作付けは必要だ」と反発を強める。
 市は新基準値を超えた地域などを独自に「重点管理地域」に指定し、除染、イネのセシウム濃度検査などを徹底した上で作付けする方法を同省に提案している。しかし、同省穀物課の担当者は「消費者の安全・安心に配慮し、福島産米の信頼を回復するには、2度と基準値を超えるコメが検出されることがあってはならない」と難色を示す。同市の農家の男性(62)は「国と市は早急に結論を出してほしい。田植えの準備に間に合わなくなる」と嘆く。
 県の調査で100ベクレル超500ベクレル以下のコメが検出された市町村の24年産米の作付け方針は【表】の通り。福島、本宮、国見、桑折、大玉の各市町村も全域での作付けを求め、農水省と意見が対立している。

■丸投げ
 農水省は放射性セシウムが限りなく100ベクレルに近かったり、100ベクレル超が局所的だったりする旧市町村について、作付け制限の範囲を最小限に限定し、それ以外は作付けを認める方策を提案する。同省は「大字」や集落単位などでの作付けを想定し、「細かな区域設定は地域の実情をよく知る地元にお願いしたい」として市町村に判断を委ねている。
 しかし、市町村側は国の示す「妥協案」にも反発。局所的に作付けを認める場合は、国が責任を持って線引きするよう訴えている。作付けの境界を決めるには農家や各JAの理解が必要で、調整が難航することが予想されるためだ。
 二本松市は最小限の範囲で作付け制限を受け入れる方針だが、「エリア分けには合理的な根拠を示すことが求められる」と強調する。


【24年産米作付け】「制限なら土地荒れる」 不安な農家、反発 道筋示せぬ県にいら立ち

 農林水産省は平成24年産米の作付けを制限する水田を実験ほ場として活用することなどを検討している。しかし、市町村や農家は「営農再開に向けた道筋が見えない」と反発する。いら立ちの矛先は、明確な立場を示していない県に向かう。

■五里霧中
IP120215MAC000019000_00.jpg 県の緊急調査で100ベクレル超~500ベクレル以下のコメが複数検出された二本松市小浜地区。30年にわたりコメを作り続けてきた農家の男性(57)は、国への不安を漏らす。「水田は1年放っておけば荒れてしまう。作付けが制限されれば、国は水田の管理費を補償してくれるのか。営農再開までの工程が分からないままでは、どうしようもない」
 農水省は24年産米を作付けしない水田を放射性セシウムの稲への移行状態を調べる実験ほ場にしたり、食用以外のコメを作ったりすることを検討している。市町村との協議では「土地が荒れることのないように配慮したい」と説明しているが、現時点で明確な方策は提示していない。
 ベラルーシの放射線学研究所によると、チェルノブイリ原発事故の影響を受けたウクライナやベラルーシ地方では、土壌の詳細な汚染マップを作成し、作物への移行係数を調べた上で、それぞれの土地に合った作物を栽培した。しかし、県内では詳細な農地の汚染マップは策定されておらず、作付け制限地域での栽培品目は見当がつかないのが実情だ。
 国見町の農家男性(64)は「県内の米どころ、それ以外の作物を作れと言われても...」と顔を曇らせる。
 JA福島中央会は、食用以外のコメを栽培した上で、県内にバイオエタノール精製プラントを建設し処理する案を国に示している。しかし、農水省は「採算性が課題だ」と、腰が重い。

■また割き
 県は、一定の作付け制限の必要性を説く農水省と、原則作付け方針を貫く市町村の双方に理解を示す。県水田畑作課の担当者は「県産米の信頼回復と、農家の生産意欲の維持はどちらも大事」と、また割き状態にあることを打ち明ける。こうした県の姿勢に、県北地方の一部の市町村やJAからは「態度が明確でない」として不満の声が上がる。
 ある自治体の幹部は「県は農水省と市町村の調整役の意識が強い。もっとリーダーシップを発輝すべきだ。市町村の味方になって、国にもの申してほしい」と訴える。
 しかし、県農林水産部幹部は「作付けまで時間がない。県としても最善の策を見つけたいが、解決策は容易に見つからない」と厳しい表情を見せた。


【背景】
 平成24年産米の作付け方針について、農林水産省は昨年12月末、23年産米で放射性セシウムが1キロ当たり500ベクレル超検出された地域は原則として作付けを制限、100ベクレル超500ベクレル以下の地域は「地元と検討する」との考え方を示した。県の23年産米の放射性物質緊急調査では、100ベクレル超500ベクレル以下の地域は12市町村(56旧市町村)で、農水省は2月初旬から市町村側と協議を開始。100ベクレル超の地域は作付けを制限したい意向を伝えている。一方、福島、伊達両市などが市内全域での作付けを強く要望していることを踏まえ、同省は制限範囲を旧市町村単位よりも限定したり、セシウム濃度が比較的低い地域での作付けを認める案も示している。県内では南相馬、広野、川内の各市町村が24年産米の作付け自粛を決めている。避難区域が設定され、23年産米も作付けしておらず、放射性物質の検査ができなかったことなどを理由としている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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