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【高速道無料化期限切れ】復興にブレーキ 観光客減 必至 物流業界、燃料高と二重苦

来訪者に新しい散策コースを説明する案内人

 東日本大震災の被災者支援を目的にした高速道路無料化の期限切れが今月末に迫り、復興への動きが停滞しかねないとの懸念が県内に広がっている。東京電力福島第一原発事故による風評被害が深刻な観光業者は、客足が一段と落ち込むことを警戒する。復興資材などを扱う物流業界は原油高騰で燃料費がかさむ中、無料化終了が二重の打撃になると頭を抱える。「被災地の復興に水を差す」。関係者から疑問や怒りの声が上がる。

■はしご外された
 「無料化で関東圏からの観光客や宿泊客がようやく戻り始めていた。残念としか言いようがない」。県旅館ホテル生活衛生同業組合の菅野豊理事長は表情を曇らせる。
 県内の観光地や観光施設は原発事故の風評被害に今なお苦しむ。いわき市など一部地域で復旧関連の宿泊需要はあるものの、大半は客の落ち込みにあえいでいる。菅野理事長の地元の郡山市・磐梯熱海温泉も、県外からの宿泊客が激減したままだ。「無料化終了の影響は大きい。組合で今後も国に延長を求める」と語気を強める。
 会津若松市の鶴ケ城の昨年4月~今年2月の来場者は、例年の8割程度にとどまっている。ただ、無料化が始まった昨年6月以降、個人を中心に客足が戻る兆しもあり、市観光公社は「無料化が誘客につながった可能性はある」と先行きを不安視する。
 東北6県を巨大な博覧会場に見立て、観光庁と地元がさまざまなイベントを展開する「東北観光博」が今月18日に始まった。会津若松市は「会津ゾーン」に設定されている。関係者は「東北の観光地に全国の注目が集まり始めていた。これからという時に、はしごを外された思いだ」と怒りを隠さない。

■予算組めない
 県トラック協会によると、県内の物流は原発事故による農作物への風評被害などで減少している。原油高騰に伴う燃料費の上昇が追い打ちを掛け、物流業者は厳しい経営を強いられている。担当者は「無料化の打ち切りは復興資材の搬送に支障を及ぼしかねない」と危惧する。
 伊達市の運送業者は「高速道路の無料化で浮いた経費は燃料の高騰分に食われてしまっていた。有料に戻れば予算が組めない」と窮状を明かす。「政府が県内の実情に目を背けるのなら、石油元売り各社が被災3県を特別料金にするといった方法を考えてほしい」と訴える。

■国の判断に疑問
 「今年を復興元年に位置付けていた。なぜ、このタイミングで打ち切るのか」。県の幹部は国の判断に疑問をぶつける。
 県は県外避難者の帰還促進、被災地復興を担う物流の支援、観光振興に向けては無料化による交通の利便性向上が不可欠として、継続を求めてきた。
 国土交通省は「財源の問題もあり、原発事故で強制的に避難を強いられている人に対象を絞った」と説明する。しかし、無料化が被災地支援を目的に掲げながら、県内は住民帰還も復興も進んでいない。
 「財政事情は理由にならない。中途半端で投げ出すような対応だ」と関係者は不信感を募らせる。県は今後も無料化の継続を求める方針だ。

【背景】
 東日本高速道路などが昨年6月、白河インターチェンジ以北の東北自動車道など東北地方の二十路線で被災者らを対象にした無料化を始めた。その後、被災地支援と観光振興、避難者支援に分けて展開し、本県をはじめ一部地域でETC(自動料金収受システム)対応車を含む全車種を無料にするなどサービスを拡充した。しかし、国の平成24年度予算案に無料化の関連経費が計上されず、3月末での終了が決定。東日本高速道路などは東京電力福島第一原発周辺地域の避難者に限り9月末まで延長することを決めた。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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