東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域の再編で、川内村と田村市が新たな区域に移行して1日で1カ月になる。第2弾で再編された南相馬市を含め、立ち入りが自由になった区域では自宅の片付けに戻る住民の姿が見られるものの、除染やインフラ復旧はこれから。帰還時期は依然、見通せない状況となっている。
■営業再開は3割 川内村
村内の警戒区域が4月1日、居住制限、避難指示解除準備の2区域に再編された。除染は国が今年度内の完了を目標に進める方針だが、前段の線量調査を含め着手時期はまだ固まっていない。
一方、旧緊急時避難準備区域では、村の「帰村宣言」を受け、住民の生活環境づくりが進む。4月2日には村立診療所が内科、歯科の診療を再開した。今後は整形外科と眼科を開設する予定だ。
川内小と川内中は今春、村内の本来の校舎で1年ぶりに授業を開始した。旧区域内にある自宅に戻った村民は約540人で、3月ごろと比べて約240人増えている。
ただ、商工業の復興のペースは鈍く、村商工会の会員事業所のうち、営業を再開したのは3割程度にとどまる。営業時間を短縮するなど変則的な営業を強いられるケースも少なくない。
村は今後、再編された区域を含めて除染や商工業への支援、雇用確保などを本格化し、村民帰還に向けた環境整備に努める方針。
■国の除染始まらず 田村市
市内都路町の警戒区域が4月1日に避難指示解除準備区域になって以降、週末などに住民が一時帰宅し、自宅や庭の片付けを進めている。国は川内村と同様、除染を今年度内に終える計画だが、再編から1カ月が過ぎても始まっていない。
市は区域再編に伴い、屋内で保管されていたごみの収集を4月に開始。月・木曜日の週2回集めているが、庭の手入れで出る草や枝木などの屋外ごみは各家の敷地内に保管してもらっている。自治会長の坪井和博さん(64)は野ざらしのごみが火災などにつながる危険性を心配し、国に対応を要望。屋外ごみの保管用に容量1トンの袋を100枚受け取り、3日に各世帯に配る予定だ。
連休を利用して田村市内の仮設住宅から自宅に戻り、片付けのため約6時間滞在した渡辺清則さん(52)は「家に入れるようになったことは前進だが、住める状態にするには半年はかかる。除染も本当に今年度で終わるのか」と不安を口にした。
■再編半月、復旧急ぐ 南相馬市
川内村、田村市に続いて市内小高、原町両区内の警戒区域と計画的避難区域が4月16日、避難指示解除準備、居住制限、帰還困難の3区域に再編された。しかし、市のインフラ復旧は始まったばかりだ。
上下水道はまだ使えず、家の片付けなどで帰宅する住民はペットボトル持参となる。トイレは集会施設などに設置した仮設しか使えない状況だ。津波で大きな被害を受けた東部地区は雨水などがたまって道路が寸断され、立ち入れない状況となっている。国による除染は今後、各住民の了解を得た上での作業となる。区域内に残る約18万トンのがれきの処理も手付かずのままだ。市は市内4カ所の仮置き場の候補地を示しており、今後、住民説明会を開く予定。
(カテゴリー:福島第一原発事故)