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【政府の基準案】賠償に不満「一律で」 不動産金額に差 地域の分断を懸念

倒壊した建物が残る南相馬市小高区の避難指示解除準備区域。区域解除時期に応じた不動産の賠償案が示された=23日

 「解除時期により、こんなに賠償額に差が出るのか」。東京電力福島第一原発事故による避難区域の不動産に対する政府の賠償基準案が明らかになった23日、避難者には戸惑いが広がった。除染、社会資本復旧後に解除となる見通しの避難指示解除準備区域の住民は「放射性物質に汚染されたのは同じ。解除時期にかかわらず、家や土地の賠償額は一律にすべき」と案の修正を求めた。

■争いのもと

 「賠償金にこんなに差が出れば、町民同士の争いのもとになるのではないか」。大玉村の富岡町安達太良仮設住宅自治会長の鎌田光利さん(56)は心配する。
 仮に避難区域が解除され、町に帰れると言われても、とても安心して生活できるとは思えない。「町の機能がすぐには戻らないことを考慮すれば一律賠償が分かりやすいはず」と指摘した。
 双葉町からいわき市の仮設住宅に避難している石橋利清さん(68)の自宅は原発から約3キロの場所にある。帰還困難区域に指定されるのではないかと思ってはいるが、それでも今回示された案の賠償額では少な過ぎると感じている。「どこに住むにせよ、昔の暮らしに戻るのには足りない」と不満を訴えた。
 政府の方針では全体の95%が帰還困難区域に再編される見込みの大熊町。会津若松市の仮設住宅に避難する無職山本進彦さん(69)の自宅は原発から約5キロで、放射線量では帰還困難区域に該当する可能性が高い。それでも「町は1つになって復興を進めている。賠償金の問題で町が分断されることが懸念される」と、町全体が帰還困難区域に指定されることを望む。
 一方、具体的な賠償基準を示すことで避難区域再編を後押しするとの見方もある。楢葉町からいわき市に避難している主婦(45)は「避難指示解除準備区域でも、この程度の賠償額がもらえるのであれば、除染さえ進めば帰還を検討してもいい」と受け止めた。

■遅過ぎる

 既に避難区域の再編が終わっていたり、方向性が示されたりした地域の避難者も政府案に反発した。
 「政府は本当に地域のことが見えているのだろうか」。南相馬市小高区の避難指示解除準備区域で商店を営んでいた石川清治さん(63)は憤りを隠さない。
 家族で市内原町区の借り上げ住宅に暮らす。インフラが復旧せず、いつ戻れるか、見通しが立たない。「帰還しないほうが賠償額が高額になる仕組みでは、誰も帰還を前向きに考えられない。避難でばらばらになっている住民の気持ちをさらに離れさせる」
 郡山市の仮設住宅で暮らす川内村の無職男性(74)も納得いかない様子だ。自宅は4月に避難指示解除準備区域に再編された。解除後すぐに原発事故前の生活を取り戻すのは難しいと思っている。「解除されても被害は続く。賠償は一律にすべきだ」と求めた。
 田村市都路町の避難指示解除準備区域で行政区長を務める坪井和博さん(64)は「本来であれば区域見直しの前に基準を示すべき」と、4月に警戒区域から再編された後に方針を発表した国の姿勢に疑問を呈した。
 年間放射線量が帰還困難区域の目安となる50ミリシーベルトを超える飯舘村前田八和木行政区滝下地区。村が示した中間案では同地区を含む行政区全体が居住制限区域になる。同地区の無職高橋恵子さん(56)は「帰還困難区域と同じような放射線量なのに賠償に大きな差が出てしまうのか」と村に帰還困難区域を設定するよう要望している。

■期限短い

 政府の案では農業への賠償として5年分を一括で支払うとした。計画的避難区域の川俣町山木屋地区の葉タバコ農家男性(57)は「5年では短い。賠償の期限は決めないでほしい」と憤る。
 地区では9月から住環境周辺の本格除染が始まる予定だが、除染したとしても、すぐには戻れないと考えている。まして葉タバコを生産できるまで、何年かかるか見当がつかない。風評被害との闘いが待っている。「原発事故前と収入面の差がなくなるまで賠償を続けてもらいたい」

カテゴリー:3.11大震災・断面

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