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【安全への問い掛け4】協定に新たな役割 事故で再考の余地浮上

 県や原発の立地町には、原発の運転に関して電力会社を指導・監督する法律上の権限はない。原子力安全対策を担当した元県職員、落合良二(68)は「東京電力と結んだ安全確保協定は、地方が原発を監視する大きなよりどころの1つだった」と顧みる。
 安全確保協定の使い方や見直しの歴史は、本県の原子力行政の軌跡に重なる。平成3年3月には福島第二原発3号機の原子炉再循環ポンプ事故を教訓に、県や立地町が運転状況を随時、確認できるようにした。県と立地町が安全対策などを確認する部会も設けた。
 その後、福島第一原発2号機で緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動したトラブルなどを受け、協定に基づく通報連絡要綱を見直した。
 さらに、原子力災害対策の重点地域が含まれている浪江、広野の両町と東電が通報連絡協定を結んだことに伴って、要綱の一部を改めた。

■約束違反
 平成10年の通報連絡要綱などの見直しから13年後、福島第一原発事故が発生した。
 未曽有の事故による混乱、地震や津波に伴う通信網の損壊などによって、安全確保協定や要綱で取り決められた通報連絡体制は、十分に機能しなかった。
 浪江町には県や東電から事故の通報連絡が全くなかった。町長の馬場有(63)は4月21日の国会の原発事故調査委員会(国会事故調)で「協定違反だ」と訴えた。
 安全確保協定を結ぶ県や立地町、東電の三者は今、避難した住民への賠償や避難区域の見直し、除染などに直面している。大事故に対して、安全確保協定が、なぜ十分に生かされなかったのかを検証するまでには至っていない。

■指摘と成果
 「法律と協定によって、国と地方の二重規制になっている」
 「地方は原発の運転再開や施設の新増設を議論するに当たって、協定を政治的な道具として使おうとしていないか」
 福島第一原発事故の発生前から、安全確保協定の使い方に対して、さまざまな指摘があった。だが、本県の安全確保協定は40数年の歴史の中で、県民や周辺地域の安全を守る大きな役割を果たしてきた。
 福島第一原発事故に伴う廃炉作業は数10年に及ぶ。原発内には溶けた核燃料や、使用済み燃料が残っている。東電は収束に向け、多くの施設・設備を新たに配置したが、トラブルが相次ぐ。また、国は原発立地地域の双葉郡内に除染で出た土などの中間貯蔵施設の建設を計画している。
 廃炉を含む事故処理は国と東電が法律上の全責任を負う。
 県や立地町は安全確保協定をどのように使い、あるいは改定し、事故後の原発の監視を長期間にわたって続けるのか-。落合は「県民に原発の正確な状況を伝えるには東電との情報共有が欠かせない。現在でも協定はその根拠となるはずだ」と説明する。
 県原子力安全対策課長の小山吉弘(59)も「協定に盛り込まれている通報連絡や事前了解、放射能監視など、再考すべき部分は多い」と指摘する。
 法的な権限を持っていない県や立地町にとって、安全確保協定が"武器"の1つであることに変わりはない。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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