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【安全への問い掛け18】県、町臨界事故に動揺 保健所に相談、検査相次ぐ

JCO臨界事故に伴い、検査を受ける中学生=平成11年10月、いわき市

 平成11年9月30日に茨城県東海村で発生したJCO臨界事故は、県や、東京電力の原子力発電所が立地する大熊、双葉、楢葉、富岡の4町にも大きな衝撃を及ぼした。
 「県内にMOX燃料が搬入され、原子力への注目が高まっている。県民が不安を抱くのではないか」。プルサーマル計画に使うMOX燃料は3日前に東京電力福島第一原発に到着したばかりだった。ある町の担当者は、プルサーマル計画への影響を懸念した。
 各町への事故発生の知らせは、科学技術庁から電話やファクスで伝えられた。しかし、夕方になっても原因は、はっきりしなかった。担当職員は心配そうにテレビのニュースを見詰めるだけだっだ。
 「できるだけ情報を集めてくれ。茨城県境に住む住民は安全か」。県幹部の1人は原子力安全対策課に指示したが、情報はなかなか集まらない。自らインターネットも使った。
 県は原発周辺や県内各地に置いていたモニタリングポストで放射線量を常時、測定していた。事故発生後、確認を急いだ。数値に異常はなかった。

■混乱広がる
 だが、茨城県に近い地域の住民は敏感に反応した。翌日の10月1日、いわき市の平一中の2年生約250人と引率教諭11人は、市保健所による放射性物質汚染の検査を受けた。事故当日の30日午後3時ごろ、遠足で常磐線を利用し、東海村を通過した。生徒の保護者が影響を心配した。検査の結果、全員に異常はなかった。
 当時、校長を務めていた松本久芳(72)は「情報も知識も少ない中、ご家族も心配だったと思う。子を思う親の気持ちは今も昔も変わりないだろう」。福島第一原発事故後の様子と、十数年前の状況を重ね合わせた。
 いわき市と茨城県の境は、事故現場から直線で約50キロある。市は各地で放射線量などを測定した。県境の勿来、田人地区で一時間あたり0.03-0.05マイクロシーベルトと通常と同程度だった。いわき市や郡山市など県内8カ所の保健所は汚染検査や健康相談を受け付けた。2日間で約700人が利用した。
 県議会は9月定例会の開会中だった。知事の佐藤栄佐久は代表質問の答弁で「極めて深刻な事態。国には早急な原因究明と再発防止を求める」と述べた。

■原災法
 JCO臨界事故は、国際原子力・放射線事象評価尺度で、当時としては国内最悪のレベル「4」(局所的な影響を伴う事故)に分類された。
 政府は事故を教訓に原子力災害対策特別措置法(原災法)を制定した。原発などで緊急事態が起きた場合に、対策拠点施設のオフサイトセンターで警戒体制を敷いたり、首相が原子力緊急事態宣言を出したりできるようにした。
 原災法に基づく緊急事態宣言が初めて出されたのは、23年3月、東電福島第一原発事故だった。しかし、頼りのオフサイトセンターは十分に機能せず、国、県、市町村、東電などの指示系統は混乱した。
 福島第一原発事故の評価尺度は、JCO臨界事故を大きく上回る最悪のレベル「7」(深刻な事故)とされた。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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