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【コメ全袋検査開始】ピーク時大丈夫か 価格下落を懸念 放射性物質 検出の不安拭えず

全袋を対象に実施されるコメの放射性物質測定。関係者が注目する中、測定器のスイッチを押す三保二本松市長(右)

 二本松市で25日に始まった平成24年産米の全袋検査で、14袋の放射性セシウムが全て検出下限値未満だったことに関係者はひとまず胸をなで下ろした。ただ、収穫ピーク時に迅速に対処できるかどうかなど課題は多い。「昨年のように放射性物質が検出されるのでは」。出荷を控える農家の不安も消えない。コメの出荷業者や消費者は、万全な検査態勢の確立を求めた。

■気を抜けない
 二本松市の同市地域農業再生協議会が運営する全袋検査場。関係者ら約200人が注目する中、協議会長の三保恵1市長が測定器のスイッチを入れた。モニターの「検査中」の文字が10秒後、安全を示す「○」に変わった。
 検査された早場米を生産した同市の農家安斎孝行さん(58)の表情が緩んだ。「出来は最高。おいしいコメを安心して食べてほしい」と呼び掛けた。一方、全量全袋検査の実施を国、県に働き掛けてきた三保市長は「まだ始まったばかり」と気を引き締めた。
 収穫ピーク時、県内の各協議会は円滑に出荷できるよう生産者の検査日を的確に割り振る必要がある。検査が滞ることで、出荷が遅れれば、取引価格の下落や食味の低下につながりかねないためだ。このため、1日も早い出荷を望む生産者が多く、不満を抱かせることなく検査を終えられるかが課題となる。
 二本松、本宮両市と大玉村の安達地方を管内にするJAみちのく安達。全域で約70万袋(30キロ入り)の出荷が予定される。斎藤道雄組合長は「コシヒカリが盛りとなる10月以降、停滞しないよう3市村などの連携が鍵になる」と指摘した。
 約6万2000袋(同)の検査を予定する国見町は測定機器1台を導入し、9月から検査を開始する。1日7時間稼働させたとしても、全袋の検査を終えるには1カ月以上を要するという。協議会事務局を務める町の担当者は「日によっては7時間を超える稼働も考えなければならない」とピーク時を想定した。

■もしかしたら
 「五百川」を生産している本宮市の農家後藤正人さん(32)は25日の検査結果に胸をなで下ろした。数日後には自分で栽培したコメの収穫が始まる。
 東京電力福島第一原発事故以降、ケイ酸カリやゼオライトを田にまき、慎重の上にも慎重を重ねて栽培してきた。これまでに作ったコメから放射性物質が検出されたことはない。品質には自信を持っているが、「もしかしたら」という思いもある。
 川俣町福田地区の農業男性(78)は「1カ所でも基準値超えが見つかると、地区全てが駄目だと判断されてしまう」と今後の測定結果が気が気でない。「いつになれば何の心配もせずに自分のコメを食べられるのか」とため息をついた。

■継続が大切
 県内のコメ業者や消費者は今後の検査の行方に注目している。
 郡山市でコメの集荷・販売会社を経営する梅本典夫県米穀肥料協同組合理事長は「まずはひと安心。今後も未検出が続き、県民が安心して食べられるコメを提供していきたい」と語った。ただ、初めてとなる全袋検査には「基準値が昨年より大幅に下がっており、不安はある。適切な検査の継続が大切だ」と訴えている。
 福島市大森の無職安斎英子さん(65)は、これまでも県産米を食べていたという。「しっかりとした検査を通過したものなら、より安心して購入できる」と話す。一方、震災以降、県産米を買わなくなった同市の40代の主婦は「昨年は安全宣言後に基準値を超えるコメが見つかった。検査で大丈夫だと言われても、すぐには信用できない。子どもが心配なので、まだ県産米を買おうとは思わない」と語った。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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