東日本大震災アーカイブ

礼儀正しく気さく

■南相馬市原町区萱浜 新川由布子さん 60
 川崎市に住む一人娘美紀さん(28)宅を頻繁に訪れ、孫の寛倖ちゃん(2つ)をかわいがっていた。昨年3月13日にも遊びに行く予定だった。
 夫の広光さん(61)と自宅の2階にいて波にさらわれた。広光さんは2日後、屋根の一部に乗って漂流していたところを救助されたが、由布子さんの行方は分かっていない。自宅は鉄筋の柱2本とコンクリートの基礎だけが残された。
 由布子さんは温厚で優しい性格だった。同居する広光さんの母ミツ子さん(82)が友人を家に呼ぶと必ずあいさつに来て「ゆっくりしていってください」と頭を下げた。ミツ子さんは「礼儀正しくて立派だと近所で評判だった。自慢の嫁だった」と振り返る。
 広光さんの父福己さん(83)が友人らとつくる山登りグループの旅行にも参加するなど、明るく社交的な一面も。福己さんは「誰とでも仲良くなれる気さくさがあった」と悲しみをこらえた。

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