■南相馬市小高区岡田 佐藤チヨ子さん 88
浪江町に生まれ、昭和17年に嫁いでからは養蚕と稲作を手伝った。毎年5月の連休に市内や宮城県から遊びに来るひ孫と苗箱を洗うのを楽しみにしていた。
明るくさばさばした性格で、自宅は近所の友人が集まる場所だった。震災1年前に浪江町で開いた米寿祝いで見せた元気な姿は、今も家族や親せきの脳裏に焼き付いている。
同居する長男栄さん(68)と栄さんの妻ミサ子さん(64)の3人で温泉巡りをすることを生きがいの1つにしていた。地震が起きる3日前も福島市の飯坂温泉に行ったばかりだった。
自宅の片付けをしていて津波に巻き込まれた。1カ月以上過ぎた4月25日、自宅から約500メートルの場所で発見された。
栄さんはその日を忘れることができない。「温泉が大好きだった母が冷たい水の中で最後を迎えたと思うと本当に悲しい。せめて暖かい場所でみとりたかった」
(カテゴリー:あなたを忘れない)