■南相馬市鹿島区南海老 中橋かつえさん 46
震災が起きたのは原町区にある縫製会社で勤務中だった。自宅を心配し帰宅。長男雅彦さん(22)といたところ、津波に襲われた。
翌朝、自宅近くで見つかった。「なぜ、お母さんだけ...」。雅彦さんの胸に、悔しさとむなしさが込み上げる。かつえさんに最後の化粧を施している時、雅彦さんは姉の美佳さん(27)に謝った。「お母さんを助けられなくてごめん」
かつえさんは、仕事にいそしむ傍ら、いつも優しい笑顔で家族を支えた。雅彦さんと美佳さんが子どものころ、話し相手はいつも母親だった。美佳さんが結婚し、長女を授かると、喜びを分かち合った。震災2カ月前には長男が誕生。2人の孫の成長をずっと見守るはずだった。
かつえさんの夫安彦さん(50)は全壊した自宅近くに現在、新たな住居を建設中で、年内の引っ越しを予定している。家族はかつえさんに中橋家の再建を誓っている。
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