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孫誕生願った両親 明るく好かれた姉

■相馬市磯部 河西良治さん 65 裕子さん 61 由紀子さん 38
 捕れたての旬のホッキ貝やコウナゴが食卓に並ぶ。家族が口に運びながら会話を弾ませた。良治さんの面影を次男の和久さん(29)は思い返す。「口数は多くなかった。晩酌をしながらみんなを見守っていた」
 和久さんが中学生のころ、船に乗って漁を手伝った青い海原の景色もよみがえる。父のそばにはいつも笑顔を振りまく優しい母裕子さんの姿があった。
 良治さんは地元の中学を卒業以来、代々続く近海漁業と60アールの田んぼでコメ作りに励んだ。裕子さんとの間に二男一女をもうけ、幸せな家庭を築いた。
 10年ほど前、良治さんは船上で作業中、脳梗塞で倒れた。リハビリに励み漁に復帰。しかし翌年、出荷作業中に再び倒れ、車椅子での生活となった。病床の良治さんを裕子さんは献身的に支えた。
 長女の由紀子さんは高校時代は演劇部に所属していた。地元の縫製会社に就職し、真面目な仕事ぶりと明るく社交的な性格で周囲から好感を持たれた。
 震災当日、良治さん夫婦は自宅から避難する際に津波に襲われ、由紀子さんは勤務先からの帰宅途中か、自宅に到着し良治さんらと共に逃げている時に津波に遭ったとみられている。
 3人の葬儀は4カ月が過ぎた昨年7月30日に相馬市内で営まれた。会場には震災から11日後に生まれた和久さんと妻貴美さん(29)の長女美玖(みく)ちゃんがいた。出産予定日は震災前日の3月10日。「まだ生まれてこないかい」。特に裕子さんは孫の誕生を心待ちにしていた。
 和久さんは美玖ちゃんを両親に見せてやれなかったことが心残り。「立派に育てるから。見守っていて」

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