東京電力の広瀬直己社長(59)は8日、福島民報社のインタビューに応じ、冷温停止中の福島第一原発5、6号機と福島第二原発1~4号機の計6基をはじめとした県内の原発に保管中の使用済み燃料について、青森県内の再処理関連施設に搬出する新たな計画作りに着手する方針を明らかにした。また、仮に原子炉に再び燃料を入れたり、再稼働する際は地元の同意が必要との考えも示し、「全基廃炉」を求める県内の意見を最優先し今後の事故対応を進めていく姿勢を強調した。
■再稼働是非 地元意見を最優先
広瀬社長が福島第一5、6号機と福島第二1~4号機の燃料搬出に言及したのは初めて。原発敷地内に新たに保管するスペースがあるかどうかや、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場と同県むつ市の中間貯蔵施設の受け入れ状況を見極める必要があるとしながらも、「計画を一つずつ立てていく。(燃料を運び出す)工程を作っていく」と述べた。
福島第一原発については現在、構内の共用プールに保管してある使用済み燃料から順次、青森県に搬出する考えも示した。
さらに、原子炉からの燃料取り出しを進める背景にも触れ、「地震が起こる(可能性のある)ことを考えれば、安全な状態をキープしておくことが大事。住民感情を考えてやりたい」と語った。
東電は福島第二原発4号機原子炉内の燃料764体を取り出し、建屋内の使用済み燃料プールに移した。4号機と同数の燃料のある同原発1~3号機についても、平成26年度中に使用済み燃料プールに移す計画。一方、548体ある福島第一5号機と、764体ある6号機の原子炉内の燃料については取り扱いを「未定」としていた。この他、福島第一には1万1417体、福島第二には1万940体の使用済み燃料が保管されている。
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広瀬社長は福島第一原発5、6号機と福島第二原発計6基の今後の取り扱いについて、地元判断を最優先する考えを強調した。
「6基の扱いは未定。原子力は国のエネルギー政策に位置付けられており、それを見極めたい」と述べたが、6基から燃料を取り出した後、仮に再び燃料を入れる際や再稼働には地元の同意を必要と考えているかとの問いに、「もちろんだ」と答えた。営業運転に向け原子炉に燃料を入れる際、地元の同意は法的には必要とされていない。
県は県内の原発全基の廃炉を求めているほか、県議会は全基廃炉を求める請願を採択している。しかし、東電が7日、発表した中期経営計画では福島第一原発5、6号機と福島第二原発1~4号機の方向性について触れられていなかった。
■東電社長 規制庁安全性高まる
東京電力の広瀬直己社長が福島第一原発5、6号機と福島第二原発の原子炉からの燃料取り出しと県外搬出の方針を示したことについて、原子力規制庁は「一般論だが、原子炉から燃料を出して保管すれば安全性は高まる。ただ、新たな保管場所の安全性確保が絶対に必要だ」と指摘した。
一方、県生活環境部は「福島県の現状を考えれば、一度、燃料を抜き取った原子炉に再び入れることは考えにくい。仮にそうした事態となるのなら、厳しい安全確認が求められる」との見解を示した。
(カテゴリー:福島第一原発事故)