東京電力の広瀬直己社長は福島民報社のインタビューで、福島第一原発事故の財物賠償に伴い、不動産についての情報を把握できた割合は対象者全体の30%程度にとどまることを明らかにした。福島復興本社(仮称)を置く候補地として、浜通りや福島市などを挙げた。
-冷温停止中の福島第一原発5、6号機と福島第二原発1~4号機の計6基の方向性は。
「未定だ。県議会や多くの市町村議会が廃炉の決議をしていることは承知しているが、原子力は国のエネルギー政策に位置付けられており、それを見極めたい」
-県民の原発に対する安心感を確保するためには、6基の分をはじめとする使用済み燃料を県外に搬出する必要があるのでは。
「第二原発では原子炉からの取り出しが始まったが、第一原発5、6号機は未定だ。(搬出する)量や青森(再処理関連施設)までのことを考えないといけないが、そういう工程を作っていく必要がある。地震がまた、起こる(可能性がある)ことを考えれば、(原子炉を)より安全な状態にキープしておくのが大事。住民感情を考えて対応したい」
-原発事故の避難者に対する財物賠償の進行状況は。
「不動産情報を把握できた割合について、県議会では(対象者全体の)50%と説明したが、30%程度にとどまることが分かった。登記簿の確認に手間取っているためで、より正確な固定資産税の情報を活用させてほしい。ただ、市町村ごとで考え方が異なるため時間がかかっている。家財の賠償受け付けから始める」
-中期経営計画では除染作業に当たる人員を三倍の300人とするとした。
「放射線に知識のある社員が中心で、市町村が除染計画を作る際、建物や校庭、農地ごとの除染方法をアドバイスすることができる。こうした要員とは別に、町内会の除染などに当たる社員を大勢、動員する。一人でも多くが福島の状況を知るべきだと考えている」
■福島復興本社候補地浜か中通り
-復興本社は、どこに置くのか。
「決まっていないが、業務が多い場所というのが条件で、浜通りは仕事が増えていくだろう。一方、県との連絡のため福島市(という選択肢)もある。郡山市という意見もあり、早く決めたい」
ひろせ・なおみ 東京都出身、一橋大社会学部卒。昭和51年4月に東京電力入社。執行役員神奈川支店長、常務福島原子力被災者支援対策本部副本部長などを務めた。59歳。
(カテゴリー:福島第一原発事故)