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【「避難勧奨」解除検討】帰っても安全か 住民疑念晴れず 「地域全体の除染進めば...」

仮設住宅で夫の遺影を前に無念さを語る林さん。特定避難勧奨地点の解除方針にも心中は複雑だ

 局地的に放射線量が高い特定避難勧奨地点の指定解除の検討方針を政府が示したことを受け、南相馬、伊達両市の避難住民らに困惑が広がっている。地域全体の除染が十分に実施されているという確証が得られず、解除後も安心して自宅に戻れないという声が上がる。解除の基準や段取りなどが明らかにされない中、両市には避難住民らからの問い合わせも相次いでいる。

■共通の思い
 「指定が解除されたとしても本当に安全なのか」。避難勧奨地点に自宅が指定されている住民共通の思いだ。伊達市霊山町小国地区の自宅が指定されている団体職員男性(51)も疑念が晴れない。
 昨年6月時点で毎時2.8マイクロシーベルトだった自宅の庭先は、今年9月に実施された除染後には毎時0.7マイクロシーベルトにまで下がった。しかし、除染が済んだのは自宅の敷地内や近くの道だけで、周囲の山林などは手付かず。最近、近所を自分で測定すると、比較的高い放射線量が出た場所もあった。
 現在、妻と高校生の子どもだけを福島市内の借り上げアパートに住まわせているが、現段階でとても自宅に呼び寄せる気持ちにはなれない。「戻ってくれば、自宅にいるだけというわけにはいかない。地域全体の除染が進まなければ安心できない」と訴えた。

■全くない説明
 政府は指定解除の対象を現時点で示していない。南相馬市原町区大谷の自宅が指定されている林マキ子さん(63)は、今後の自身や家族の身の振り方に影響するだけに、自宅が指定解除の対象に入るのかに関心を寄せる。
 今年4月から区内の仮設住宅で高校生の孫らと暮らしている。放射線量がどの程度まで下がっていれば解除になるのか、子どもがいると考慮されるのか、解除は集落で一括なのか-。分からないことばかりだが、現在までに行政からは何の説明もない。
 長年連れ添った夫は今年2月、自宅近くの山林で除染の仕事で、重機で木材を運んでいる際に事故に遭い亡くなった。仮設住宅の部屋で夫の遺影を見詰めると、「原発事故さえなければ」とむなしさが込み上げてくる。「これ以上、苦しめないでほしい。せめて筋の通った対応をお願いしたい」と求めた。

■わだかまり
 特定避難勧奨地点が存在する地域内では、指定の有無により、世帯間で賠償などに差が出て住民間に摩擦も生まれている。「指定が解除されても地域の分断は解消されない」。伊達市霊山町小国地区の自宅が指定を受けた40代の会社員男性は指摘する。
 小学生の子どもと一緒に家族で市内に避難している。指定以来、地域住民との付き合いが大幅に減った。放射線の心配に加え、他の住民との感情的なわだかまりもあり、指定が解除されても地元に戻るつもりはないという。
 小国地区を中心に指定されなかった世帯の住民の間で、指定世帯と同じ賠償を求めて国の原子力損害賠償紛争解決センターに集団申し立てをする動きも出ている。中心的な住民の1人は「指定解除だけでは何も変わらない。分断を和らげるには不公平をなくすしかない」と説明する。

【背景】
 特定避難勧奨地点は局地的に放射線量が高い場所として南相馬市153世帯、伊達市の128世帯、川内村の一世帯が指定されている。政府は特定避難勧奨地点の解除について「解除後1年の年間積算線量が20ミリシーベルトを確実に下回る場合」を要件としている。政府の原子力災害現地対策本部は、今回発表した空間放射線量調査結果について、放射性物質の半減期による自然減少と一部で実施した除染により線量が下がったとみている。同本部は今後、モニタリング調査を実施した後、住民の意見を反映させながら県や市と指定解除について協議する。川内村については今後線量を調査し判断する。解除になると、就労不能損害などの賠償がなくなる見込み。南相馬市は政府に今後の方針などを説明するよう強く求めており、伊達市は指定が地域コミュニティー内の摩擦に結び付いているとし早期解除を求めている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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