首都ミンスク郊外にある児童保養施設「ジダノヴィチ」。チェルノブイリ原発事故による汚染地域などの子どもたちが、宿泊しながら24日間の保養プログラムを受けていた。
「保養施設に来ることはどう思ってるのかな」。福島一中教諭の菅野恭英さん(45)が聞く。「とても楽しみ。毎年、心待ちにしている」と小学生から笑顔で答えが返ってきた。保養プログラムが子どもたちに浸透しているのだろう。
施設には、教育棟や診療棟などがある。滞在中に授業を受ける教室や体を動かすジムが設けられているほか、ホールボディーカウンターや甲状腺検査機器が備えられていた。放射線について学ぶ専門ルームもあった。壁にはベラルーシ語で「ヒロシマ」「ナガサキ」の文字とともに、原爆投下当時の状況を写したパネルが掲げられていた。
保養プログラムは、1年間に一回利用できる。施設は国内に14カ所あり、子どもたちは毎年好きな場所を選んで利用している。汚染区域の幼児から高校生は無料だ。同じ学校の20人程度が一緒に参加し、教師も同伴する。ぜんそくやアレルギー治療機器もあり放射線対策だけでなく、総合的に子どもの健康が管理できる。
現在、福島県内でも子どもたちの健康を考え線量の低い地域で夏休みなどを過ごす一時保養事業などが行われている。しかし、統一的なプログラムなどはできていない。公募で参加した県教育委員長の境野米子さん(64)は「(ベラルーシのような)施設や、統一したプログラムが必要なことをあらためて感じた」と、今後子どもたちの健康を守る対策へのヒントをつかんでいた。(本社報道部・江花 潤)
(カテゴリー:ベラルーシの今 福島市放射線対策視察団同行)