福島県は平成25年度、廃炉作業中の東京電力福島第一原発と、冷温停止中の福島第二原発で災害が起きた際の対応拠点となるオフサイトセンターをそれぞれ南相馬市原町区と楢葉町に新たに整備する方針を固めた。当初予算案に整備費約20億円を計上する。福島第一原発事故で、大熊町のセンターが放射線量の上昇で機能しなかったことを踏まえ防護機能などを強化する。福島第一、第二原発では災害発生時の対応も異なるため、2カ所の整備が必要と判断した。
■国が全額負担
南相馬市の施設は福島第一原発、楢葉町の施設は福島第二原発にそれぞれ対応する。設置場所は南相馬市原町区萱浜の県環境創造センター建設予定地付近と楢葉町の楢葉南工業団地を予定している。25年度に設計などに着手し、早ければ26年度にも供用を開始する方針。
整備費は国が全額負担する。ただ、25年度の政府予算案に盛り込まれたのは一施設分のみで、楢葉町の施設を先行整備する。南相馬市の施設についても、国が予算措置する方向で調整しているもようだ。
14年に整備された大熊町のオフサイトセンターは福島第一原発事故時、周辺の放射線量が上昇したほか、通信網が寸断されるなどして、ほとんど機能しなかった。こうした教訓から、放射性物質を遮蔽(しゃへい)するための空気浄化フィルターや、複数の通信回線などを整備する。
オフサイトセンターは、原子力災害対策特措法で原子力事業所ごとの設置が定められている。総理大臣が「緊急事態応急対策等拠点施設」として指定する。通常、国の財政負担で都道府県などが建物を整備している。
特措法では、設置範囲を原発などから20キロ未満としていたが、大熊町のセンターの事例を踏まえ、文部科学省と経済産業省は昨年9月、5キロから30キロ未満に省令を改めた。
■距離や連携先考え選定
楢葉町の施設整備予定地は福島第二原発から約7.5キロに位置する。旧緊急時避難準備区域と避難指示解除準備区域の境界線で、同町から北は警戒区域で立ち入りが制限されている。逆に南に設置すれば原発から遠くなり、対応が遅れる可能性もある。また、約20キロの距離にある福島第一原発の事故にも対処できると判断したとみられる。
南相馬市原町区の予定地も福島第一原発との距離が約20キロ。同市以南が警戒区域となっているほか、周辺に県の合同庁舎や市役所があり、連携しやすいことなどが選定の決め手になったとみられる。
(カテゴリー:福島第一原発事故)