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仲良し漁師夫婦 無口な夫支え続けた妻

■新地町大戸浜 寺島武男さん(83) トキ子さん(73)

 武男さんとトキ子さんは海沿いの自宅に2人で暮らしていた。震災当日、トキ子さんが武男さんの車椅子を押し、避難所の緑地公園に向かっている姿を近所の人が見掛けた。途中で津波にのまれたとみられている。トキ子さんは震災から16日後の3月27日、武男さんはその翌日、自宅から150メートル程離れた場所で見つかった。
 南相馬市鹿島区に住む長男で相馬署庁務管理員の芳一さん(51)は「無口な父を母がさりげなく支える、仲むつまじい夫婦だった」と語る。芳一さんは震災当日、署で警察官の装備品を準備するなどの対応に追われていた。両親の元に駆け付けたい気持ちを押さえ「職務を全うすることが父と母の願い」と無事を祈り、業務をこなした。3日後に初めて実家に戻った。土台しか残っていない状態を見て覚悟を決めた。
 武男さんは漁師だった。7、8年ほど前に船上で脳梗塞で倒れるまで刺し網漁を続けた。トキ子さんは武男さんを手伝い、漁協婦人部の行事にも積極的に参加した。震災前は夫婦で長女の家族と旅行に出掛け、温泉旅館に泊まるのを楽しんでいた。
 武男さんが漁に出られなくなってからは、漁師仲間からしばしば新鮮な魚が届いた。芳一さんが実家に帰るたびに、武男さんとトキ子さんは「本当に近所の人に助けられている」と話していた。「皆さんに恩返しするためにもいっそう公務に励み、父母を弔いたい」。芳一さんは決意を新たにしている。

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