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【返済猶予法きょう期限切れ】 条件緩和継続を 避難経営者ら不安 金融機関「変わらず対応」

銀行の窓口に掲げられた中小企業金融円滑化法期限切れ後の対応を説明する電子ポスター=福島市・東邦銀行本店

 中小企業などの資金繰りを支援してきた中小企業金融円滑化法(返済猶予法)が31日で期限切れとなる。東京電力福島第一原発事故に伴う避難企業などの経営者には「金融機関から貸し付け条件緩和などの措置が今後も受けられるのか」と不安が広がる。国は条件緩和の努力を続けるよう金融機関に求めており、財務省福島財務事務所や県内金融機関は「法律終了後も対応に変化はない」との説明に追われ、不安払拭(ふっしょく)に躍起だ。

■代替制度を
 「これからが大変なのに...」。双葉郡内でホテルを経営し、現在は原発事故でいわき市に避難している40代男性は表情を曇らせる。市内で来年を目標に新たなホテルを開業しようと準備を進めている。法律という後ろ盾を失うことに不安を隠せない。
 原発事故発生時、金融機関からの借金が約3億円あった。ホテルは立ち入りが制限される警戒区域に入り、収入は途絶えた。金融機関に申し出て返済期間延長などの貸し付け条件変更を2回してきた。ホテル新築には県の補助を受けても自己負担分約2億円を新たに借りる必要がある。新天地での営業に心配の種は尽きず、いつまた返済に困るか分からない。「同じように条件変更してもらえるのか」と懸念を口にした。
 県北地方で自動車整備工場を経営する40代男性は「原発事故に被災した県内も全国の他の地域と対応が一律なのは納得できない」と不満を漏らす。
 顧客の多くが農家で、原発事故の放射性物質の影響で耕作を休止したり風評被害で農業収入が落ちたりして、注文も大幅に減った。震災前に1回、条件変更をしているが、その際、別の金融機関に変更を断られた経験がある。法律が終われば一層厳しい対応になるのではと心配だ。「事情が異なる被災地向けに、法律の代わりになる制度を設けるべきだ」と訴えた。

■周知が不十分
 財務省福島財務事務所は法律終了を前に、県内の商工会議所や商工会など100カ所余りに対して職員訪問や資料送付を行い、法律終了後も貸し付け条件変更などの対応は変わらないことを繰り返し説明してきた。しかし、今月、県や商工団体向けに開いた説明会で出席者から懸念の声が寄せられた。担当者は「周知が十分ではないのは確か。今後も説明を続ける」と話す。
 金融庁は金融機関に対する検査マニュアルと監査指針を改正し、貸し付けの条件変更に適切に対応することなどを明記した。同事務所は県内金融機関の検査・監督を担っており、今後も条件変更などの対応で金融機関側に問題があれば説明を求めていく考えだ。
 同様に引き続き企業支援に力を注ぐ姿勢を示す金融機関。東邦銀行(本店・福島市)は4月以降も従来通りの対応を続けるよう、全本支店に文書通知や支店長会議を通じて徹底を図ってきた。企業向けには店頭窓口などにポスターを掲示しているほか、企業担当の行員が直接、取引先を回って説明している。担当者は「地域経済が活性化しなければ銀行も発展しない。地域金融機関として事業者に寄り添った対応は当然だ」と強調した。

■経営改善が鍵
 全国で借金返済を猶予してもらうなどの目的で法律を活用した企業は30万~40万社とされ、うち5万~6万社は返済猶予を繰り返してきた。企業の再生が進まなければ、返済を猶予してもいずれは事業が行き詰まり、倒産に追い込まれる。いかに経営改善に導くかが今後の鍵になる。
 福島財務事務所は金融機関に対し、避難企業のケースなど、取引先の実情を踏まえた対応を求める一方、今後は返済の先送りにとどまらず、これまで以上に企業の経営改善を支援するよう促す考え。
 政府は新たに発足させた地域経済活性化支援機構=瀬谷俊雄社長(県商工会議所連合会長)=を軸に企業支援を継続する構えだ。

【背景】
 中小企業金融円滑化法は、中小企業などが返済条件の緩和を求めた際に、金融機関はできるだけ応じるように努力義務を定めた法律で、実際に9割の申し込みに応じている。米リーマン・ショック後の急激な景気の落ち込みに対応するため、平成21年12月に施行。23年3月末で終了する予定だったが、東日本大震災の影響もあり、二度延長された。財務省福島財務事務所は期限切れに合わせて相談窓口を設けている。電話番号は024(535)0320。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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