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周囲気遣う夫婦 優しく、信頼厚かった長男

■浪江町両竹 区藤浩一さん(79) 豊子さん(77) 良一さん(51)

 浩一さんと妻の豊子さん、長男良一さんは海から600メートルほど離れた山際で3人で暮らしていた。田畑に囲まれ、自然が豊かだった。近くの山ではタラノメやフキノトウ、ナメコ、シイタケが採れた。浩一さんが作ったコメや、豊子さんが育てた旬の野菜、港に上がった新鮮な魚が食卓を彩った。
 盆や正月には親族が集まった。長女の中谷勝子さん(58)は「いつも温かく迎えてくれた」と振り返る。夏には請戸港から上がる花火を見ながら庭先でバーベキューを楽しんだ。
 浩一さんは親戚や近所の知人を大切にした。採れた山菜などを分けて気遣っていた。豊子さんは温厚な人柄で、他人への思いやりにあふれていた。良一さんは優しい性格で、家族から頼りにされていた。勤める町内の車の部品工場で労働組合の代表を10年近く務めるなど、同僚からも信頼が厚かった。親戚が自宅に集まった際はカラオケで自慢の声を披露し、盛り上げた。
 震災当日は良一さんが工場、浩一さんと豊子さんは自宅にいた。「助けに行かないと」。良一さんは同僚に言い残し、車を自宅に走らせた。その後、3人とも津波に遭った。東京電力福島第一原発事故の影響で捜索は難航し、良一さんは約1カ月後の4月20日に自宅近くで発見された。浩一さんは5月30日に双葉町の海岸で、豊子さんは7月25日に自宅から約1キロ離れた場所で見つかった。
 隣接する双葉町にある墓地は原発事故で警戒区域となり、立ち入りができなかった。3人の遺骨は親族が郡山市内の寺院に預けている。勝子さんは「すぐに見つけたかった。早く古里に帰してあげたいのだが」と涙ぐんだ。

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