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(34)命の価値 弔慰金 法律家の目線 「天変地異とは違う」 法の未整備にいら立ち

災害弔慰金の支給等に関する法律をとじ込んだ新開さんのファイル。原発事故に適用することに納得できない思いが募る

 福島市松木町の法律事務所。弁護士の新開文雄さん(61)は東京電力福島第一原発事故後、行政が遺族に対し、弔慰を示す災害関連死制度にぼんやりとした違和感を感じてきた。制度が地震や津波による被害を対象にしているためだ。
 原発事故から2年3カ月余。不自由な避難生活を続ける双葉郡の住民の嘆きに耳を傾けてきた。「原発事故の被災者に自然災害が対象の法律を当てはめること自体がおかしい」。漠然とした思いが確信に変わった。
 東日本大震災の津波によって福島第一原発の1~4号機は全電源を喪失し、水素爆発を起こした。避難の過程で、大熊町の双葉病院の入院患者ら高齢者をはじめ、多くの住民が命を落とした。ストレスや満足な治療を受けられなかったことが原因とされる。原発事故による長期避難に起因した県内の災害関連死認定数は22日現在、1400人を超えている。
 震災が発生した平成23年3月11日。福島市内も大きな揺れに見舞われた。新開さんの事務所の本棚から法律書がバラバラと落ちた。付近の家々が何度も強い余震に震えた。
 テレビには津波にのみ込まれる本県沿岸部が映し出された。翌日には原発が水素爆発した。「災害弔慰金や損害賠償の相談が相次ぐぞ」。そう直感した。「どういう対応策があるのか。被災者に寄り添うためには...」。手当たり次第に法律書や資料を読み込んだ。
 「災害弔慰金の支給等に関する法律」は、ファイルにとじ込んでいた。第二条で「災害」を定義付けていた。そこには、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波その他の異常な自然現象により被害が生ずること」とあった。原発事故の避難に伴う死亡は、弔慰金の支給対象とはなっていなかった。
 国は事故から2カ月後の5月、「その他の異常な自然現象」に原発事故に伴う避難を含めるとの見解を打ち出し、県を通じ市町村に伝えた。市町村の災害弔慰金の支払い業務は、この通知に基づき進められている。
 原発事故による長期避難に起因した災害関連死は、国が法律を原発事故後の現状に合わせ解釈したにすぎない、と新開さんは指摘する。事故から2年余が過ぎても、法律が整備されないことにいら立ちを募らせる。弔慰金の額は妥当か、支給事務を市町村が担うべきなのか。原発事故に特化した対応が必要だと感じている。
 原発事故から間もないころ、双葉病院の入院患者の遺族から相談を受けた。事故により患者は古里にとどまることを許されなかった。慌ただしい避難は患者らの大きな負担となった。「原発事故による強制避難は天変地異とは違う」
 原発は国が「安全」だとして建設を進めてきた。近くで生活する住民は危険な施設とは認識していない。津波や地震といった自然災害との「危険性(リスク)」の違いは明白だった。「住民が安全な高台に頑強な家を建てたとしても、放射性物質から自らの身を守ることはできない。逃れることができない『人災』。それが原発事故なのだ」

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