東京電力福島第一原発事故を受けた国際放射線防護委員会(ICRP)の対話集会「第6回ダイアログセミナー」最終日は7日、福島市保健福祉センターで開かれた。全村避難を強いられている飯舘村民と科学者らが、帰村を見据えて教育、健康、除染などの在り方を話し合った。近く、提言をまとめて政府などに提出する。
ICRPや国内外の研究機関、飯舘村、報道機関などから約130人が出席した。八巻義徳村教育長は「帰村したときに力のある教員を確保できるかが課題」との認識を示した上で、学校運営に地域住民や保護者の意見を反映させる協議会が必要だと強調した。
福島医大の大平哲也教授は震災前後の村民の健康診断結果を比較分析し「体重増加に伴い、高血圧、糖尿病型、脂質異常者の割合が増加している。循環器疾患の発症リスクが高くなっている可能性がある」と警鐘を鳴らした。背景に避難生活による活動量の低下や心理的ストレスの増加が考えられるとした。
農家の菅野宗夫さんは、農地の除染方法が確立されていないことやイノシシなどに農地が荒らされていることに触れ「農業再生への道のりは遠い」と述べた。東京大の溝口勝教授は、菅野さんら農家と連携した農地除染の試みについて報告し「農家の知恵と自然の力を生かし、より低コストで、粘土に固着した放射性セシウムを取り除きたい」とした。
司会を務めたICRP委員のジャック・ロシャール氏(フランス)は総括で「住民と行政、科学者らが課題を話し合い、協働を続けることが再生への道」とまとめた。
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