東京電力福島第一原発の汚染水問題で、政府は10日、トラブルの事前防止策を強化するため「廃炉・汚染水対策チーム」を設置した。同原発で起こる可能性がある全てのトラブルに対し、国内外の知見を反映させた追加対策を11月上旬までにまとめる。同日、廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議の初会合で決めた。東京五輪招致で安倍晋三首相が「政府が責任を果たす」と発言した国際公約を踏まえ、迅速に対応策を示す考えだ。
■海外向け広報も強化
福島第一原発では、汚染水の海洋流出防止のために護岸地中を改良した「土の壁」を造ったが、汚染水が壁を乗り越えるなど想定外のトラブルが発生している。政府が国費を投じる「凍土遮水壁」も大規模な実用例がなく技術面で課題が残る。
このような不安材料を抱える中で、対策チームはいつ起こるか分からないトラブルに備え、多重的な対応策を検討する。
過去の原発事故の例なども参考に、廃炉作業に取り組む海外の原子力専門家をはじめ、土木や科学など幅広い分野の専門家から知見を集める。政府の汚染水処理対策委員会の大学教授やプラントメーカーの関係者ら有識者の意見も踏まえ、対策チームが対応策を集約する。
対応策は随時、見直していく。現場の状況と連動させるため、政府と東電が現場レベルで連携強化を目指す汚染水対策現地調整会議の意見も吸い上げる。
平成32年の東京五輪に向けて、海外向けの広報体制も強化する。これまで汚染水対策や水産物の放射性物質の検出値などの情報は政府が在外大使館などを通じて伝えていた。今後は、外務省などの協力を得て、海外メディアに発信する仕組みも整える。同原発に対する正しい情報を伝えることで、海外からの風評の払拭(ふっしょく)を狙う。
対策チームは関係閣僚等会議の下部組織に位置付けた。茂木敏充経産相をチーム長に外務、財務、厚生労働、農林水産、国土交通、環境、復興の関係省庁の副大臣、原子力規制委員会の田中俊一委員長(福島市出身)ら32人態勢で構成する。
関係閣僚等会議の初会合は、田中委員長や根本匠復興相(衆院本県2区)らが出席し、冒頭以外非公開で首相官邸で開いた。議長の菅義偉官房長官は冒頭、「総理の発言通り、汚染水の問題を今後も確実にコントロールし、解決につなげることが必要」とあいさつ。汚染水問題解決へ、政府が総力を挙げ、迅速、機動的な対策を実行する決意を示した。
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