自民党の資源・エネルギー戦略調査会(山本拓会長)は20日、経済産業部会などとの合同会議を党本部で開き、東京電力福島第一原発の汚染水漏れ対策を政府の直轄事業として実施するとした特別措置法の試案を示した。試案は汚染水対策を、東電主体で実施する第一原発の廃炉作業と切り離して考えるべきとした上で、費用負担も含めて国が責任を持つと定めた。特措法で国主導をアピールし、国内外の不安を解消する思惑があるとみられる。
試案は、原子炉建屋への地下水流入を防ぐ凍土遮水壁の設置や、海洋への汚染水の漏えい防止事業を例示しながら、8月に認可された東電の廃炉実施計画から切り離して担当閣僚の直轄事業にできるとした。
試案に「主務大臣の直轄事業とできる」と明記し、経産省の責任を明確にした。政策的な国費投入を含めて国主導で汚染水対策を進めるための根拠とする狙いがある。
また、東電の汚染水対策を含めた廃炉作業を監視している原子力規制委員会との権限を整理すると規程している。汚染水対策を国直轄事業とした場合、国側が第一原発に立ち入る権限を整備する必要性を指摘した。
合同会議は試案を基に特措法案について協議し、10月召集予定の臨時国会か来年の通常国会への提出を目指す。党政調で案をまとめ、公明党など他党にも理解を求める方針。
山本会長は記者団に、政府提出法案とするか、議員立法とするか政府側との調整を急ぐ考えを示し、「できるだけ早く形にしていく。福島県の皆さんに安心してもらえる手だてを示すことが必要だ」と述べた。
党側の動きに対し、菅義偉官房長官は18日の記者会見で、「政府と東電が適切な役割分担と責任体制の下で、汚染水問題を解決することが極めて大事だ」と述べ、特措法制定に積極的に取り組む姿勢を示している。
政府は汚染水問題について「国が前面に立つ」と明言し、予備費を含め、国費約470億円を汚染水対策に投入する方針を決めている。党内からは東電や原子力規制委員会との役割分担を法的に明らかにするよう求める声が出ていた。
■汚染水特措法の試案要旨■
◆趣旨
汚染水対策について、環境保全、環境汚染の未然防止、国内外の不安解消といった観点から政策的な国費投入を含め、国が講ずべき措置を定める。
◆枠組み
(1)福島第一原発の廃炉作業の安全対策をまとめた実施計画から放射性汚染水対策事業(流入地下水の抑制、海洋への漏えい防止など)を切り離す(2)汚染水対策事業は主務大臣の直轄事業とすることができる(3)費用は国が負担する。
◆その他
(1)国内外の知見を取り入れ、必要な研究開発を行う(2)汚染水対策事業の主務大臣と原子力規制委員会の権限を整理する(3)国直轄事業の場合、東電など土地所有者の行為の制限、他人の占有地への立ち入りなどを手当てする。東電と連携、相互協力を図る。
(カテゴリー:福島第一原発事故)