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県議会米国視察(1) 【行政】 危機対応州が独自判断 原子炉内データ監視

ペンシルベニア州の対策を説明するジャナティ氏。スクリーンには原子炉の監視システムが映し出された

 米国では昭和54(1979)年のスリーマイルアイランド(TMI)原発事故を踏まえ過酷事故対策が見直された。さらに東京電力福島第一原発事故を教訓に、行政や電気事業者、電力業界も二度と大惨事を繰り返さないための模索が続く。長期間を要する廃炉作業、直面している汚染水問題...。いまだ先行きが不透明な福島第一原発事故の収束に向けた作業と相通じる。県議会の議員海外行政調査団が調べた米国の取り組みを追い、県内の課題を探る。(本社報道部・鈴木仁)

 「政府や電気事業者と一線を引いた立場で、独自の評価を貫く」。スリーマイルアイランド原発を抱えるペンシルベニア州の州緊急事態管理庁会議室に、力のこもった声が響く。原発事故の緊急対策を説明する州放射能保護局(BRP)幹部リッチ・ジャナティ氏は、独立した組織としてしっかり危機管理に当たると繰り返し強調した。壁際のスクリーンには、州が原子炉のデータを即時に監視できるシステムの画像が映った。
 TMI原発は1979年に事故を起こした2号機は廃炉とした。1号機は「現役」として稼働を続ける。州にはTMI原発の他にも4つの原発がある。
 TMI原発事故が起きた当初、州は電気事業者からの報告が遅れたことに加え、収集した情報が正確さを欠いていたことから初期対応が混乱した。その苦い経験を踏まえ、事故後には原発事故対策と監視機能を徹底的に見直した。
 事故後に確立した原子炉の監視システムは、原発に異常が現れた場合、電気事業者からの報告を待つことなく、州が瞬時に状況を把握することができる。各原発には州の安全担当員を常駐させ、施設の状況の変化に目を光らせる。
 民間の電気事業者にとって「最重要項目」ともいえる炉内データを行政に開示している。本県では東京電力福島第一原発事故後も導入されていない仕組みだ。県ではトラブルが続く福島第一原発と、福島第二原発の原子炉の詳細について、東電から報告を受けるまで把握することは難しいのが現状だ。ジャナティ氏は「州と事業者が相互に協力し合える関係を築くことが大切。それが結果的に住民からの信頼につながる」と指摘する。
 炉内圧力や温度など複雑なデータを解読するには、専門的な知識と分析能力が必要となる。州は原子力工学などに精通している人材の採用、育成に力を入れている。さらに、原発施設の図面などをいつでも入手できる態勢を整えている。
 TMI原発事故前には存在しなかった原発の制御室との専用電話回線、放射線量をモニタリングする専門チームや専用車も整備した。動植物の放射性物質検査は平常時も継続し、異常がないか確認している。
 州の原発事故対策にかかる費用は年間約270万ドル(約2億7000万円)。州内で原発を運転する電気事業者から徴収する料金でまかなうため、政府に頼らず自立した会計を維持している。
 万が一、原発に緊急事態が生じた場合、州の緊急事態管理庁やBRPが連携して対応する。原発の状況やモニタリングデータから独自に住民避難などを判断する。
 政府や原子力規制委員会(NRC)とは緊密な協力態勢を取るが、住民避難の範囲や時期の考え方に隔たりが出た場合、州知事が独自に結論を出す。NRCは州に判断を委ね、支援に当たる。
 「州民の健康と安全を守るのが州の役割」。全米6番目の約1200万人を抱える州としての責任をアピールした。
 説明を受けた県議の一人は「福島県とは緊急対応の取り組み方が基本的に異なっていた。行政に対する住民の信頼を得るため、電気事業者の報告、国の『判断待ち』の現在の県の姿勢を改善する必要がある」と語った。

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