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【生活支援相談員】 避難者ケア維持できるか 離職年30人以上 雇用形態の不安定さ影響

仮設住宅で浪江町民を見守る生活支援相談員(右)=二本松市・安達運動場仮設住宅

 東京電力福島第一原発事故で避難した住民を見守る「生活支援相談員」は毎年、少なくとも約30人が離職している。県内29の市町村社会福祉協議会が主に臨時で雇用しており、避難者の安否確認などを担う。相談員が定着しないことで、避難者ケアの低下などが懸念されている。現場からは身分保障の不安定さなどを理由に「将来性が見込めない」との声が上がる。

■年度末に集中
 相談員の配置数が増加傾向にある中、年度末だけで平成23年度は配置人数増の25人を除き34人、24年度が同4人を除き29人が離職した。補充のため23年度は59人、24年度は33人を新規に採用した。この他、年度途中に辞める相談員がおり、各市町村社会福祉協議会は人員の確保に腐心する。
 県社会福祉協議会によると、臨時採用という身分の立場から、より継続雇用が見込める仕事に転職するケースもあるという。
 一方で住民からの要望は年々高まっている。同協議会によると、今年4~9月の仮設住宅や借り上げ住宅などへの訪問件数は延べ約32万1000件。昨年同時期より15%増えたという。富岡町の無職女性(87)は体調を崩し、入退院を繰り返す夫(85)と郡山市の仮設住宅で暮らす。女性は「気心が知れた相談員が来てくれると、小さな変化にも気付いてくれて安心感がある」と頼りにしている。

■現場の危機感
 避難区域を抱える市町村のうち、最多となる25人が在籍する浪江町社会福祉協議会は、主に中通りに避難する町民約4500人を支援の対象としている。「守らなきゃならない人がたくさんいる」。相談員統括チーフの池崎悟さん(39)には危機感がにじむ。
 池崎さんは原発事故前、町で自動車整備業を営んでいた。家族4人で本宮市に避難後、23年8月に相談員になった。福祉分野の仕事経験はなかった。それでも同じ町民の目線から、避難生活の実態を肌で感じてきたつもりだ。
 相談員1人当たりの担当は約200人。25年度に入り2人が辞めた。一昨年に18人でスタートしたが続けているのは4人。池崎さんは「1人欠けただけでも、業務を埋めるのは大変。住民との人間関係を構築するには時間がかかる」と険しい表情を浮かべる。

■一時的
 「何年もの間、安心して働いてもらえるような財政的な仕組みがない」。県社会福祉協議会の大川原公年事務局長兼総務企画課長はため息を漏らした。
 相談員の給与は、県の緊急雇用創出基金を充てている。単年度の予算措置だ。県は「国からの交付金次第だが、今後も事業の継続を見込んでいる」と強調するが、相談員の事業が継続されるという保証はない。
 19年に新潟中越沖地震に見舞われた新潟県には、相談員を設置する事業を長期的に実施できる仕組みがある。県が基金を造成し、財団法人が運営している。基金の担当者は「行政のような年度の予算に縛られず、現場の実情を反映させることができる」と説明した。

■ストレスの緩和
 「住民の死に直面した」「どこまで悩みの相談に関わっていいのか」-。2月に県社会福祉協議会が行ったアンケートには悩みが並んでいた。精神的なストレスを抱え、離職するケースがあるという。
 同協議会は28日、福島市で相談員の心のケアを目的とした研修会を開く。例年の倍近い100人余りの申し込みがあり、12月に別の日程を設けた。事務局は「相談員の負担が大きくなっているのでは」と分析する。
 福島学院大福祉学部福祉心理学科助教で臨床心理士の佐藤佑貴さん(37)は「原発事故という複雑な問題が絡む相談に向き合うことは容易ではない」とみている。改善のためには「相談員同士の情報交換を密にする体制づくりなども必要なのではないか」と語った。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故と東日本大震災を受け、本県では平成23年7月に生活支援相談員の配置が始まった。4月時点で29市町村社会福祉協議会に200人いる。津波被害を含め、仮設住宅や借り上げ住宅に避難した住民に対し、戸別訪問による安否確認や定期的なサロン活動などを行っている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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