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【線量下がらない住宅、公共施設】 再除染費わずか78億円 政府 範囲や手法示さず

 政府は平成26年度、東京電力福島第一原発事故に伴う再除染に78億円を充てる。再除染を望む県民の声や市町村の要望を受け、初めて予算化する。除染後に放射線量が下がらない住宅や公共施設などを対象とする方針。ただ、費用は26年度当初予算案に盛り込んだ除染費用2582億円の3%にとどまる。再除染する具体的な市町村や手法は示されておらず、実際にどの程度行うのかは不透明だ。

■切実な声
 住宅を除染した後、国が長期的な目標とする年間被ばく放射線量1ミリシーベルト(毎時0.23マイクロシーベルト)に達しない事例は多い。一部が国直轄除染地域の川内村では、除染した住宅約1200戸のうち、3割の約400戸で除染後も目標値を上回った。村は空間線量を可視化する「ガンマカメラ」を使い、雨風のため放射性物質が山などから低地へ移動する「ウェザリング効果」により局所的に線量の高い住宅周辺を測定、再除染の必要性を国に求めている。
 国直轄除染が唯一完了した田村市都路町でも毎時0.23マイクロシーベルトを超える地点が残る。昨年10月の政府と市、住民の意見交換会では、住民から再度の除染を求める要望が続出し、避難指示解除時期が先延ばしとなった。
 都路町の避難指示解除準備区域から市外に避難している男性(55)は「自宅は山が近い。安心して戻るためには、放射線量の高い地点を再除染してもらいたい」と切実だ。

■局所的
 再除染は、福島第一原発周辺の国直轄除染地域、市町村が除染し、国が費用を負担する「汚染状況重点調査地域」のいずれも対象になる。環境省は作業後に線量を調査する。放射性物質を取り残した場所や、除染後の空間線量が作業前の数値と変わらない地点などを再除染する。
 住宅除染の場合、一戸当たりの費用は150万~300万円掛かる。伊達市の実績によると、比較的放射線量が高い地域の一戸当たりの費用は総額約330万円。国が予算化する78億円は約2400戸分の費用にしかならない。
 再除染の範囲について同省は、放射性物質がたまりやすい住宅の雨どいや、側溝など局所的になるとの見通しを示す。除染が遅れる中、再除染で予算化する78億円の明確な積算根拠は示していない。同省は「予算は必要に応じて追加したい」としている。

■基準見えず
 市町村に再除染の動きが出てきた。対応が遅い国に先駆けた形だ。
 相馬市は独自に再除染基準を設けた。東大の専門家らの意見を踏まえる。「地上1メートルの高さで毎時0.35マイクロシーベルト以上、かつ地上1センチで毎時1.0マイクロシーベルト以上」とした。比較的放射線量が高い玉野地区で、必要に応じて再除染する。
 費用は国に求める考えだ。ただ、国が基準を明確にしていないため、認められない可能性もある。市の担当者は「再除染を求める住民の声は無視できない。国は早く基準を示すべきだ」とし、予算が足りなければ増額するよう訴える。
 福島市は約9万5000戸の全戸除染を進めている。進捗(しんちょく)率は30%にとどまるものの、既に国に再除染の財政措置を求めた。担当者は「再除染がどの程度、必要になるかは見通せない。しかし、市町村が市民の要望に応えられるよう、国はしっかり予算を確保してほしい」と話している。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故に伴う除染費用は平成26年度当初予算案を含め、これまでに計1兆6260億円が計上されている。除染作業は遅れが目立つ。仮置き場確保の難航などが要因になっている。福島第一原発周辺の11市町村が対象の国直轄除染について、環境省は25年度内としていた完了時期を最大3年間延長した。25年度内に終わるのは田村、楢葉、川内、大熊(帰還困難区域を除く)の4市町村の見込み。「汚染状況重点調査地域」の40市町村では、計画に対して住宅除染を終えたのは昨年11月末現在、35.4%となっている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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