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産学連携拠点 人材育成・確保に力 研究成果、地域に還元

土壌中の放射性物質の動きを調べる研究室を訪れた視察団=PNNL

 浜通りの復興に向け世界最先端のロボット研究開発拠点などを整備する政府の「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」は、大学や企業の原子力関係の研究所を集積した産学連携拠点の形成を柱の一つに掲げる。国内外の英知を集め、東京電力福島第一原発の廃炉を確実に進めるとともに作業に関わる人材の育成・確保を目指す。
 政府視察団は1940年代からプルトニウムの精製が始まり、80年代後半の運転停止までの間に汚染水問題が起きた米ワシントン州の核施設「ハンフォード・サイト」と周辺地域を訪問した。
 同地域にはパシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)のほか、ワシントン州立大トリシティ分校があり、研究成果を地域の産業振興に生かしている。
 PNNLは原子力に関する研究発展を目的に65年に設立された。政府関連プロジェクト以外にも事業を拡大し、現在はエネルギー、環境問題、安全保障、医学など幅広い分野の研究・開発に携わる。高性能のスーパーコンピューターを無料開放し、世界中の研究者と共同研究を展開する。敷地内で約4500人が働く。
 ハンフォード・サイトの汚染水問題にも取り組む。土壌中の放射性物質の動きをシミュレーションする研究や近くを流れるコロンビア川のモニタリング、放射性物質の生物への影響、遺伝的調査などを続けている。地域の水産資源であるサケやチョウザメの生態調査、養殖も進めている。
 トリシティ分校はPNNLと連携し、生物工学研究に力を入れる。山林のマツから燃料用の濃縮糖を取り出すなど、持続可能なバイオ燃料開発の分野で評価を得ている。ワイン醸造の学科があり、技術を地元農家に広めている。現在、周辺地域はワインの国際的産地となっている。
 両施設に接する都市圏の人口は70年に約5・5万人だったが、40年後の2010年に約17・2万人と3倍以上になった。政府は福島第一原発周辺の復興モデルになるとみている。
 周辺地域の経済開発のため、地元の経済人らがNPO法人を設立し、企業誘致などを進める。法人役員のガリー・ペーターセンさんは「サイト内の除染が終われば多くの作業員は去ってしまう。地域社会が一つになり、除染が終わった後をどうするか考えることが大切だ」と力を込めた。
 視察地は半世紀前から産学連携に取り組み、現在の活力ある地域経済をつくり出した。視察団の一人は「福島では数年で地域経済を復興させたい。構想実現には拠点となる場所に集中してインフラの整備などを急がなくてはならない」と語った。(本社報道部・丹治隆)

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